林業に転職したいけど、林業は危険な職業No1だって聞いたんで、やっぱり止めようかな?
どうも元フォレストワーカーのKitajinです。
林業と聞くと、誰もが思うのは危険な職業であるということではないでしょうか。
事実、林業に従事していると、毎年のように痛ましい事故を知ることになります。
下のグラフを見てもらっても分かるように、毎年のように死者が出ており、年々、その推移は徐々に下がってきてはいますが、それでもゼロになることはありません。
グラフだけ見ると、林業がいかに危険かと、転職を躊躇したくなるかもしれません。
しかし、個別のケースを調べていくと、決して偶発的に誰にでも起こりうる事例ではないことがわかります。
本記事では、林業に転職を考えているあなたに向けて、林業の何が危険な作業なのかを、具体的に紹介しています。
本記事を読むことにより、林業は決してむやみに危険な仕事ではなく、安全に作業していれば、事故は防げることを知ってもらえるはずです。
この記事を書いた人
- 静岡県浜松市で10年間林業に従事
(素材生産業者で伐採を主にやっていました)
- 林業に関する基本的資格はすべて取得
(林業架線作業主任者の国家資格取得者)
- 林業の情報を発信したくて林業ブログを運営
(運営歴1年の新人です)
林業の魅力や重要性などを実体験を通して発信していくつもりなので、林業に転職を考えている方は参考にしてください。
※本記事には、プロモーションが含まれています。
広告
伐採の危険
林業の作業において、一番危険な作業として挙げられるのが伐採です。
高さ、何十メートル、重さ、何トンの木を斜面で倒すのですから、とても危険な作業であると想像できると思います。
では、伐採時にどんなことが危険なのかを見ていきましょう。
林業の作業において、一番、事故が多い作業として挙げられるのが伐採です。
高さ数十メートル、重さ数百キロから〜数トンの木を斜面で倒すのですから、危険な作業であると想像できると思います。
伐採においての事故につながる要因は大きく分けて2つあります。
- 自分に伐った木で被害を受ける
- 他の作業員が伐った木で被害を受ける
どちらも充分気を付けているはずですが、なぜ事故は起きてしまうのでしょうか?見ていきましょう。
周囲に人がいるのか確認できてない
伐採する前にまず気をつけたいことは、一緒に働いている作業員がどこにいるのかを把握することです。
伐採者は作業に入る前に必ず周囲に人がいないことを確認しなくてはならず、確認が取れてから作業を始めなくてはいけません。また他の作業者も、伐採者がどこで作業をしているのかを把握しておかなくてはなりません。
しかし、お互いが確認せずに作業をはじめて、倒れてきた木に直撃して亡くなるという事故があとを絶ちません。
ではなぜ、そんな危険なのことなのに注意を怠ってしまうのか?
それは普段から、伐採作業に慣れてしまい、つい注意を怠るということがあるのです。また、お互いが当然、気づいているだろうと思い込み、他の作業に没頭していることや地形に隠れて気づかないということもあります。
嘘のようですが、ボク自身も実際に伐採していた時も、他の作業をしていた時も、危険区域にいるのにも拘らず、作業にのみに没頭している作業員がいました。
ですので、お互いが気づかない状況でも大丈夫のように、伐採の手引きの中には、倒す木の長さの2倍、左右45度の範囲内には伐採者以外、立ち入らない。となっています。
しかし、現実問題として、施業地が狭すぎて、それほどの距離を離れられない場合もあります。
伐採範囲が狭い場合は、お互いに何をやっているか十分に気にして、被災しないための処置を取らなくてはなりません。
具体的には、笛を吹いて伐採を知らせたり、伐採時には、作業を止めて待つなどが挙げられます。
伐採した木がどういう動きをするのか予測できていない
伐採時に気をつけるべきポイントとして、倒した直後の木が、どのような動きをするのかを予測するということが挙げられます。
木を倒す場所が平地なら、木は地面に倒れた後は動くことはないでしょうが、山の中の伐採は斜面で行います。
下りに伐れば、木はロケットのように滑り落ちていき、山側に伐れば、安定して止まる場合と、幹が地面についた瞬間に衝撃で根株から離れて、根っこの方から斜面を滑り落ちてくることもあるのです。
また上の画像のように、重ねて木を伐り倒した場合も、木が先に倒した木の上に乗って滑り落ちてくることがあります。
その他にも、様々な状況によって木の倒れる状態が変わります。
伐採者は、倒した木の直撃を受けないように、木が地面につく前に退避をしなくてはなりません。退避場所は伐採する前に、木がどのように倒れてもいいような場所に設定しておき、速やかに退避が出来るように準備してから伐採を開始するのです。
かかり木の処理を適切にできていない
かかり木とは、伐採した木が他の立木にかかった状態で止まったことをいいます。
林間の狭い現場や、ヒノキなどの枝に粘りがある木を伐採すると、立木に伐採した木がひっかかって倒れないことがあります。
かかり木の状態として、立木に伐採した木が完全に寄りかかってしまったものから、枝が一か所、引っかかっている状態まであり、落ちないとたかをくくっていたら、風が吹いて木が揺れて落ちることがあります。
伐採者が落ちないと思って放っておいた木が後に、かかり木になっていることを知らない作業員が真下を通ったタイミングで落ちてきて、直撃するという事故があるのです。
ですので、かかり木になった場合、速やかにかかり木を落とすか、さもなくば、かかり木であることを周囲に知らせ、進入禁止にしなくてはなりません。
かかり木になりやすい現場だと分かっている場合は、あらかじめ牽引具などを用意して、かかり木を処理できる状態にしておきます。そして、かかり木が発生した場合は、かかり木の処理をしてから次の作業に入らなくてはなりません。
また、処理の仕方にも、適切なやり方があります。
本来は、牽引具を使って、引いて落とすか木回しなどで木を回して、重心をずらして落とします。
しかし、面倒だからと、後ろの木を伐って、かかり木に当てる「浴びせ倒し」をしたり、かかり木が需要のない木の場合、掛かっている木を途中で玉切りして落とす、「元玉切り」をする人がいます。
これらの方法を使って、かかり木を処理すると、思わぬ方向に木が倒れて、自分や他の作業員に倒れた木が直撃して、事故の原因となることがあります。
ツルを飛ばしてしまう
ツルとは、上の画像にあるような木の繊維がちぎれた箇所のことを言います。
伐採時、倒したい方向に受け口という三日月状の切れ込みを入れて、追い口という三日月の真後ろから切れ込みを入れていき、徐々に切断面が近くなった時に発生する木の残った部分、根っこ部分と幹の部分を最後まで繋いでいる部分をツルと呼びます。
ツルがあることにより、伐採木は自分が狙った通りの場所に木を倒すことができるのですが、このツルの部分は厚すぎれば木は倒れてくれず、薄すぎれば、木は重心に引っ張られて、ツルの役目を果たさずに倒れていきます。
ツルの機能が役立たず、木の自重の方向に倒れていくことを、「ツルを飛ばす」と呼んでいました。
立木を見てもらえば分かると思いますが、どんな木でも、枝が出ている面があり、枝が多い方が重くなっています。また斜面に生えていれば、重心は下側となり、木が反って立っていれば、反っている方が重心となるのです。
そして、伐採者は、木の重心がどっちにあるのかを木を見極めて、ツルをどのくらい厚さ残しておくのかを判断して伐採を始めます。
判断を誤れば、木が重心の方へと引っ張られてしまい、自分の狙い通りのところに倒れてくれません。
重心の方向に倒れた先に、建造物があったり、作業員がいることで、事故につながるケースが往々にしてあるのです。
蔓が絡んでいるのに気づかずに伐採してしまう
伐採する木が、必ずしもチェーンソーを入れれば倒れてくれるとは限りません。
例えば、林間が狭くて、隣り合った木の枝が絡み合っていたり、場合によっては蔓や蔦が周囲の木と絡んで繋がっていたりして、いくら倒そうとしても倒れないことがあります。
蔓が絡んでいる場合に起こることとして、
- 伐採した木が蔓によって倒れない
- 伐採した木の方が重くて、蔓がついていることにより引っ張られて、他に蔓が絡んだ木を根っこごと倒す
- 枯れた木に蔓が絡んでいる場合、伐採した木が倒れるのに合わせて、枯れた木が折れて落下してくる
伐採者は木を伐る前に、必ず木の上部とその周辺にも注意を向けなくてはいけません。
隣の木と枝が絡んでいないか、蔓が絡んでいないかを、伐採する前、上を見上げて確認する必要があります。
これは一見簡単のようですが、毎回確認するのは案外手間がかかりますし、樹冠で枝で上が見えないということもあります。
ですので、万が一の時のために、伐採者は適切な退避場所を決めておく必要があり、木を倒したときに上から何かが落ちてきてもいいように、安全な場所に逃げるのです。
枝や枯れ木が落ちてくるのを想定していない
伐採後、上から落ちてくるものとして、前出した枯れ木の他に枝などがあります。
伐採した拍子に、周辺の枝を折ったり、自重で枝が折れたりします。また、自然に折れた枝が、伐採木の上に載っており、伐採した拍子に落ちてくる場合もあります。
よく折れる枝としては杉があり、杉の場合、枝といっても樹齢何十年も経った枝なので、非常に重く、数十メートル上から落下してくるので、重力が働き、直撃するとかなり危険です。
また、山には様々な理由で枯れた木が多くあり、倒した木が枯れた木に当たり、折れて作業者の上に落下してくることもあります。
枯れ木といっても、またまだ重量があり、直撃すればケガでは済まないケースもあるので、ここでも伐採後の退避が重要になってきます。
チェーンソーが挟まれるのを取ろうとして逃げ遅れる
伐採時や造材時に未熟な作業員が、木にチェーンソーが挟まれることがあります。
伐採のする前にどこに重心があるのかを見極めるのですが、見極めに失敗して、重心の方向に木が傾いて、切り口が重心に押しつぶされて、チェーンソーが挟まれるのです。
チェーンソーが挟まれた状態がなぜ良くないのかというと、退避が遅れるからです。
チェーンソーは一台、数万円から十数万円します。それを壊したりしたら大損だと気にして、何としてもチェーンソーを取ろうとして、逃げ遅れ被害にあうことがあるのです。
チェーンソーが挟まれないためには、あらかじめ木の状態を見て何処の重心が掛かっているのかを判断するのと、チェーンソーが挟まれないためにクサビを入れておくことです。
クサビとは、チェンソーを入れると抵抗する木に対して、隙間を作る三角柱型の道具のことです。これを挟まれそうな場所にハンマーなどを使って打ち込むのです。
林業は、道具なしでは成り立ちません。ですので、林業では数多くの道具を使用します。
しかし、道具の中には、重い鉄だったり、刃物などがあり、何かの拍子に過って怪我を負うことがあります。
続きまして道具の危険について解説しています。
林業の作業 道具の危険
チェーンソーの危険
林業において身近な危険として、チェーンソーの危険があります。
刃物が高速回転しているので、触れたらケガは必至です。しかも、チェーンソーで切れた傷は包丁の傷とは違い、傷口がいびつになり、傷痕が残ります。ですので、チェーンソーでは絶対に触れないようにしたいものです。
誰も好き好んでチェーンソーに触れるわけがないのですが、ふとした瞬間にキックバックしたり、足場の不安定な場所で作業して、バランスを崩すなどをして、触れてしまうということがあります。
防護ズボンなどが義務化されていますが、それで大丈夫だと思わずに、いつでもチェーンソー作業時には足元を確保して、しっかりチェーンソーを握り、慎重に作業をしたいものです。
刈払い機の危険
刈払い機でも毎年怪我をする人がいるようです。
刈払い機は鋭利な刃物が高速回転しているので切断面はキレイですが、その代わりキレ味が鋭く、当たった瞬間、一瞬で深くまで切れます。
幸い、肩掛けバンドなどを使えば刃が身体に触れることはないのですが、バンドを外していたり、何かの拍子に当たることがあります。
また、刈払い機は作業者同士で事故になることもあるので、充分な間隔を取って作業しなくてはなりません。
重機の危険
現在では、林業現場になくてはならなくなった重機での作業ですが、重機のオペレーターは、その機械が大きくなればなるほど周囲が見えづらくなります。
また、運転席の右側は死角になっていて見えづらく、旋回する時に人がいる可能性を考慮しなければなりません。
最近ではバックモニターなどが取り付けてあり、安全確保も十分にしていますが、それでも、作業に熱中しすぎて、周囲に人がいることは気付かずに動かすオペレーターがいます。
また、重機の運転で気を付けたいのは、現場が簡易的に作られた作業道だと言うことです。
作業道は補強されて作ったわけではないので、その強度は人間が考えているほど簡単に測れるものではなく、何かの拍子に崩れ重機もろとも落ちてしまい、その下敷きになって死亡するケースも過去にはありました。
またフォワダーは、案外スピードが出るのと山の作業路を走行するので、走行中にハンドル操作を誤り、斜面から落ちてその下敷きになり死亡したケースもあります。
重機に乗っている時は、つい油断してしまうので、慎重な操作方法を心がけなければなりません。
ワイヤーの危険
搬出などで、ワイヤーによる木材の吊りさげ作業があります。
山の中で造材した木を架設集材などを使ったり、グラップルにウィンチなどを付けて引っ張ったりして出すのですが、その時に吊りさげた木材の下で作業をしたことにより、ワイヤーが切れたり、木材がワイヤーからすり抜けて落ちてくることがあります。
これは滅多にない事ですが、それでも、滅多にないから油断して木材の下敷きになることがあるのです。
重い木材を吊りさげるのですから、ワイヤーが切れることがあるのです。
事故を起こさないためには、絶対に吊りさげた木材の下には入らないことと、ワイヤーの点検をこまめにすべきです。
ですが、これも長い年月をかけて油断していき、ついやってしまいがちなことなのです。
作業中の危険
その他の作業にも危険な箇所がありますので、十分に気を付けて作業するように心がけたいものです。
高いところから落ちる
林業でも、高所で作業する場合があります。
例えば、架線集材の架設時に、木に登り、アンカーなどをつける作業で木に登ります。他にも、特殊伐採などで木の高いところに上ることもあります。
また、切り立った斜面での作業をする場合も往々にしてあります。
高所作業では、ハーネスなどの転落防止の器具をつけて、落ちても怪我を最小限にするような処置を取ります。
斜面から滑落する
山の地形には、切り立った崖のような斜面が至る所にあります。
低い山だと思っていても、なだらかな場所と、崖のような斜面が交互にあったりするものです。 そういった場所での作業中に滑落することは、あり得えます。
滑落しないためには、足場を確保しながら歩くということと、無理な態勢での作業はしないことです。
あとは、慌てずに、無理をしないことも重要です。
危険と思う時は、作業せずに手を付けないと判断することも重要です。つい、欲張って、無理な作業をして、事故にあうことはよくあることです。
鋭い枝などが刺さる
山の中には、枯れた木が、放置されています。
檜などの枝が枯れると、鋭利なトゲのようになり、それを踏むと、靴を突き抜けて足の裏に刺さることがあります。
それで怪我をする作業員が後を絶ちません。
鋭いトゲばかりではなく、足場が悪いところで何かに引っ掛かり、転ぶこともあります。平地なら、転んでも大したことはありませんが、山の中では、転んで斜面を転がり落ちたり、道具をなくしたりすることがあります。
足元の危険を察知するには、落ち着いた行動をとることが一番です。
ゆっくりと足元を確認しながら、作業をすることが安全に作業する一番の方法です。
〇本気で林業に転職を考えている人はこちらへ👇
林業支援制度『緑の雇用』からなら、自分の希望する地域の事業体と繋がれます。
最後に
林業において、絶対に安全と言うことはありません。どの作業も一歩間違えれば危険な場面があり、それを日々、当たり前のようにやるのが仕事なのです。
しかし、そんな中でも、一度もケガをせず、ミスもしない人がいます。彼らは毎日の作業に慎重で、どんな作業も手を抜きません。
彼らは毎日の作業に慎重で、どんな作業も手を抜きません。 労働災害で必ず言われる、ヒヤリハットという言葉があります。
「1の重大事故に対して、29の小さな事故があり、300の表に出ない事故になりかけた事例が存在する」というハインリッヒの法則です。
絶対に怪我をしたくないなら、普段から慎重にひとつずつ作業をこなしていくという考えが必要です。 そして、自分一人だけでなく、この考えを作業員全員の共通認識にしていくことが大切なのです。
関連記事👇