どうも元フォレストワーカーのkitajinといいます。
林業と聞くと、どうしても、「キツイ」「汚い」「危険」というイメージが付きまといます。
否定はしませんが、そんな林業の中にあっても、事業体によって格差があることはあまり知られていません。
そこで、本記事は数ある林業事業体の中でも、話に聞いたブラックな事業体のお話をしたいと思います。
10年間林業に携わってきたボクが見聞きした、ヤバい事例の数々をご紹介します。
後半には、ブラックな事業体に転職しないためにどうすればいいかの補足情報もありますので、最後までご覧ください。
事例はすべて別の事業体であったことを取り上げています。
この記事を書いた人
- 静岡県浜松市で10年間林業に従事
(素材生産業者で伐採を主にやっていました)
- 林業に関する基本的資格はすべて取得
(林業架線作業主任者の国家資格取得者)
- 林業の情報を発信したくて林業ブログを運営
(運営歴1年の新人です)
林業の魅力や重要性などを実体験を通して発信していくつもりなので、林業に転職を考えている方は参考にしてください。
※本記事には、プロモーションが含まれています。
林業ブラック企業事例
社長が重機で追いかけてくる
その事業体では、作業道の施工時、新人が伐採を担当し、作業道づくりを社長がしていたそうです。
新人は、あらかじめ決められた支障木を先行伐採していったのですが、伐採が上手くいかず、作業道を作っていた社長に追いつかれたそうです。
すると、社長は新人の真後ろまで重機を近づけ、作業道づくりをはじめたといいます。
その新人は、伐採に集中できず、最後まで急かされながら作業を続けたという事でした。
事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、運転中の車両系建設機械に接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのある箇所に、労働者を立ち入らせてはならない。
労働安全衛生規則第158条(接触の防止)と関連法令、判例 - 無料で法律、判例検索 - とある法律判例の全文検索β (thoz.org)
ただし、誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させるときは、この限りでない。
年間300日働かせる
その事業体では、年間労働日数が300日を超えていました。(ちなみにボクの働いてた事業体は、年間労働日数が270日前後です。)
休みは週に1度しかなく、年末年始やGWの休みは三連休のみ、お盆休みもないハードな事業体です。
雨の日は当然休みではなく、台風がきてもギリギリまで仕事をしていたと聞きます。
その代わり給料はいいということでしたが、給料がいくら良くてもそんな事業体で働くのはキツすぎると思った記憶があります。
労働災害が絶えない
林業は、労働災害が多いというイメージがありますが、しかし、各事業体規模で見ていくと、数年に一度、有るか無いかというくらいのものです。
しかし、その事業体は毎年のように怪我人を出し、ヤバい会社ということで有名でした。
そして、ついには死者を出してしまったのです。
どのような仕事をしていたのかは分かりませんが、怪我人が出るのには必ず理由があります。その理由を放置したまま、仕事だけをしていく事の危険さを表した悪い事例です。
労働災害が発生した場合、会社はどのような責任を負う可能性があるのでしょうか。会社側は以下の4つの責任を追及される可能性があります。
労働災害(労災)とは?発生時に会社が負う責任、対応すべきことを解説! - 現場改善ラボ (genbalab.jp)
- 刑事責任
- 民事責任
- 行政上の責任
- 社会的責任
嵐の中で働かせる
天候に左右されやすい林業ですが、風雨で仕事を休むかどうかは各事業体によって判断が異なります。
しかし、いくら判断が分かれると言っても、台風が近づいてきているというのに仕事をする事業体はそこくらいです。
台風の時を想像してもらえば分かると思いますが、風雨が強くなり、街中に居ても危険です。それを山の中で作業させるというのですから、どれほど危険か想像に難くないと思います。
特に伐採は、風に最も影響を受けやすい作業の一つです。
倒そうとしている木が風のせいで押し戻されて倒せなくなるのです。更に、風にあおられてチェーンソーの切れ目から裂けたり、折れたりすることもあります。
他にも危険なのは、風により木がしなると枝が周囲の木を接触して、折れて落ちてきます。上空数十メートルから落ちてくる枝の衝撃は相当なものです。
強烈な風に煽られた木は、根っこから倒れてしまいます。これを風倒木と言い、酷いと、山全体の木が風で倒されてしまいます。
その他にも、まだまだ台風での危険は多くあり、そんな時には絶対に作業すべきではないのです。
労働安全衛生規則でも禁止事項になっています。
第四百八十三条 事業者は、強風、大雨、大雪等の悪天候のため、造林等の作業の実施について危険が予想されるときは、当該作業に労働者を従事させてはならない。
労働安全衛生規則 第477条~第517条|労働法検索|労働新聞社 (rodo.co.jp)
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老人社員に何も言えない社長
林業では、現在も多くの高齢の方が現役として働いています。
長年働いてきたベテラン作業員の中には、職人気質なところがあり、教えるより見て覚えろというタイプが未だにいます。
その事業体では、社長が代替わりしたことにより、新しく若い人材を雇用する事にしました。
若い新人が入ったまでは良かったのですが、社長が代替わりして間もないこともあり、いろいろとバタバタしていたので、教育担当者はなく、全員が何となく新人に教えるというスタンスを取っていました。
小さな事業体だったので、現場の指揮は一人のベテランが一任しており、他の作業員たちは、各々の得意な仕事をこなすというスタンスでした。
ここに若い新人が入ってきたので、それこそ教えるのではなく、見て覚えろの世界だったと言います。
すると、そのベテラン作業員が、自分たちがやっている作業をそのまま新人にもやらせようとしたのです。しかし、そのやり方というのが新人にしてはハードルが高く、危険な作業でした。
当然、若い社長はやんわりと意見したわけですが、ベテラン作業員は突然怒りだし、「俺のやり方が気に入らないなら勝手にしろ」と投げやりに言ったといいます。
社長は、そのベテランに辞められては困るので、仕方なく理不尽な態度を放置して、新人の方に「仕事に慣れろ」と言うのが精一杯でした。
労災保険の申請をしてくれない
労働災害が発生すると、事業体にとっては不利益にしかならず、起こらないに越したことはありません。
労働災害が起きた場合、事業主は、怪我をした従業員に対して補償責任を負わねばいけません。
労災事故が発生した場合、当該事業主は、労働基準法により補償責任を負わねばなりません。しかし、労災保険に加入して いる場合は、労災保険による給付が行われ、事業主は労働基準法上の補償責任を免れます(ただし、労災によって労働者が休業する際の休業1~3日目の休業補 償は、労災保険から給付されないため、労働基準法で定める平均賃金の60%を事業主が直接労働者に支払う必要があります)。したがって、労災保険に加入し ていない場合は、労働基準法上の補償責任を負うことになります。
労働災害が発生したとき |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
ところが、事業体の中には労災保険料が高くなるのを嫌ったり、労働災害が起こった会社とみなされるとマイナスイメージなので、かたくなに労災保険を拒み、自費で治すように言ったそうです。
経費はすべて自分持ち
林業の作業をするのには、様々な道具が必要となり、それを個人で所有することを求める事業体もあります。
当然、それらに掛かるお金は経費なので、会社から負担されるはずです。ところが、道具代を支払われない事業体もあると聞いたことがあります。
となると実費で賄うので、「とてもじゃないがやってらんねぇ」となってしまいます。
具体例としては、チェーンソーを自己負担するとなると大変です。
チェーンソーは非常に壊れやすく、仕事で使用していると、どんなに大事に使っても10年くらいしかもちません。しかも、部品によっては年に数回壊れ、壊れた部品を交換しながら使っていくので、部品代もバカにはなりません。
また、壊れるたびに給料が減っていくと思うと仕事にも影響が出て、作業効率が悪くストレスにしかなりません。
更に林業では、装備にもお金が掛かります。ヘルメット、防振手袋、防護ズボン、防護ブーツ、腰袋、その他、細々とした物も含めると10万円近く掛かるのではないでしょうか。
それらも自己負担となると、少ない給料が益々減っていきます。
良い事業体を探す方法
林業のブラック企業に転職しないためにはどうすればよいのでしょうか?
答えは、自分が転職先とした地域の林業ガイダンスに行って、直接確かめるしかありません。
林業は狭い世界なので、事業体の評判がすぐに分かります。
自分が目星をつけた事業体について、ガイダンスの担当者に直接聞いてみてください。大体、反応でいいか悪いか分かります。
最後に
林業は特殊な業界なので、一般に言われるブラックとは少し異なると事例と思ったのではないでしょうか。
林業では、作業が常に危険と隣り合わせてあり、ちょっとした油断が事故に繋がります。
しかし、日常が危険な作業ばかりなので、マヒして、つい危険な作業をしてしまうのです。しかも、本来ならば止める側の社長が、自身で危険な作業をしたり、させたりしていることもあります。
本記事の事例は、10年近く前の古いものばかりですので、今ではこんなことをしている事業体はないかもしれませんが、しかし、林業では、現在でも多くの労働災害があるので断言はできません。