どうも、元フォレストワーカーのkitajinです。
本記事では、作業前ミーティングで行われる KY 活動の事例を紹介していきたいと思います。
作業前に行われる KY ミーティングを行うことで、安全に作業をする意識を高めることができますが、しかし、毎日のことで、ついその文句を考えるのが大変になってくるはずです。
決して、KY活動を軽視しているわけではないですが、少しでも時短をして、他のことに時間を割いて、安全を高高めたが良い場合もあります。
本記事を読んで、作業前ミーティングのK Y活動を苦労せずに行えるように役立ててもらえたら幸いです。
この記事を書いた人
- 静岡県浜松市で10年間林業に従事
(素材生産業者で伐採を主にやっていました)
- 林業に関する基本的資格はすべて取得
(林業架線作業主任者の国家資格取得者)
- 林業の情報を発信したくて林業ブログを運営
(運営歴1年の新人です)
林業の魅力や重要性などを実体験を通して発信していくつもりなので、林業に転職を考えている方は参考にしてください。
※本記事には、プロモーションが含まれています。
KY活動のやり方
まずはじめに、KY活動の意味と、やり方について簡単に紹介します。
KYの意味
KY活動とは、危険(kiken)予知(yoti)の頭をとった造語です。「危険予知活動」の略称で、職場で起こりうる事故や災害を未然に防ぐために実施する活動です。
KY活動は、職場に潜む危険を洗い出し、対策を考え、それを実践していくプロセスを指します。具体的には、業務開始前に「どのような危険があるのか」を職場で話し合う“KYM(危険予知ミーティング)”の実施が欠かせません。
KY活動は、作業者の危険への感受性を高め、労働災害を起こさないという心がけを教育する効果があります。
KYの種類
危険予知(KY)活動には、KYT(危険予知訓練)とKYK(危険予知活動)の2種類があります。
KYTは実施のための計画を立て、KY活動は対策に取り組みます。KYTで訓練した内容を、KY活動として現場で実践していくという想定で考えてください。
・KY活動の活動内容の例は次のとおりです。
- 現状把握:どんな危険が潜んでいるか話し合う
- 本質追及:これが危険のポイントだ
- 対策樹立:あなたならどうする?
- 目標設定:私たちはこうする
・KYTには、次の3種類の実践活動があります。
- イラストKYT
- 指示出し指示受けKYT
- インシデンレポートトKYT
KYTのイラストKYTでは、イラストの中に潜む危険を見つけ出し、その危険を回避するための対策を検討します。
KY活動記録をつける
日付、会社名、リーダー名、作業員数、グループの作業内容、危険ポイント、わたしたちはこうします、本日の安全目標、署名欄(グループ全員の自署)※署名欄有りパターンの場合で構成されています。
その他にも、手順、現場、設備、資格、装備、体調の確認に項目があったり、リスクアセスメント項目がついている場合もあります。
労働災害が起こる主な原因
ヒューマンエラー
"ヒューマンエラー"、または「人為的過誤」とも称されるものは、不注意によって引き起こされる行動のことです。これは、誰しもが犯す可能性のある不注意、具体的には見落としやうっかりなどから発生します。
ヒューマンエラーは、以下の12つのカテゴリに分類されます
- 危険軽視や過信
- 不注意
- 知識不足、未経験、不慣れ
- 迂回や手抜き
- 高齢者の身体機能の低下
- 誤認識
- 状況判断
- パニック症状
- コミュニケーション不足
- 疲労
- 単調な仕事による注意力の低下
- 集団的な問題
慢心や不注意以外にも、疲労や誤認識など、十分に用心していても発生する可能性があることを示唆しています。事故を予防するためには、健康管理が日常的に行われることも肝要です。
リスクテイキング
リスクテイキングとは、故意に危険な行動を選択する行為を指します。
これは、手間や労力、時間、またはコストを節約しようとし、その結果、安全に必要な確認手続きを怠ったりする傾向があらわれます。また、仕事やタスクに対して過度に慣れてしまい、あるいは油断してしまうことから、"これぐらいなら問題ないだろう" と過信する行動もリスクテイキングに含まれます。
リスクテイキングが発生する要因には、リスクを正しく認識できていない場合や、認識していてもリスクの評価が不正確である場合などが挙げられます。
日常的に「これくらいは大丈夫だろう」という過信が生まれ、リスクテイキングの傾向が高まります。そのため、このような状況を防ぐためにも、KY活動は不可欠です。
林業の危険度
林業のKY活動の意味合いは、他の業種と変わりはありません。
しかし、林業特有の危険作業や山の危険などがあるので、他の業種よりも危険度が高く、重要度はおのずと高くなってきます。
作業前ミーティングに役立つKY活動の事例と対策
いかに労働災害を起こさない取り組みをするか?その中に、日々のKY活動が重要となってくるのです。
それでは、実際のKYミーティングに活用できる事例の紹介をしていきたいと思います。
チェーンソー作業
チェーンソー キックバック
チェーンソー作業時、スプロケットが木に当たり、キックバックを起こして、跳ね返って人体に接触する場合がある。
対策
- キックバックを起こす先端部分を当てずに作業をする
- 体からチェーンソーを放し、両手でしっかりと持って作業をする
作業の移動時
チェーンソー作業時、移動をする場合は、足を取られて転倒をしたりしてチェーンソーが接触する場合がある。
対策
- チェーンソー作業時、移動する場合は、安全ロックをかけた状態で移動する
- 止まった状態から作業を開始する
枝払いの時に枝に張力がかかっている
伐倒木の枝払いをするとき、枝に思わぬ張力がかかっており、ソーチェーンが挟まれたり、枝を切った拍子に跳ね返ってくる場合がある。
対策
- 枝払いをする場合は、枝の張力を逃がすために、何度か切れ込みを入れて枝払いをする
伐採作業
かかり木処理
伐倒した木が立木にかかり、倒れなくなった場合、元玉切り、浴びせ倒し、かかられ木の伐採などはしない 。
対策
- 牽引具などを使って、伐倒木を引き下ろす
- フェリングレバーなどを使い、かかり木を回して落とす
- かかり木が落ちずに作業を終える場合は、かかり木があることを知らせるためにロープで囲い、目印を施しておく
つるがらみ
伐採木上部に蔓が絡んで、伐採木が倒れない。また、蔓が絡んだ木が枯れている場合、折れて落ちてくる可能性がある。
対策
- 伐採する前に伐採木に蔓が絡んでいないかを確かめて、絡んでいた場合は、伐採をするべきか判断する。
- 伐採する場合、牽引具やウィンチなどを用意して伐採をする
- 蔓が絡んだ木が枯れている場合は、伐採後、安全な場所への退避を心がける
枯れ木が折れて落ちてくる
伐採時、枝がらみや蔓がらみにより、周囲の枯れ木が折れたり、倒れてくる可能性がある。
対策
- 周囲の木が枯れていないかを確認する
- 可能なら、あらかじめ、枯れ木を切り倒しておく
- 伐採後、速やかに安全な場所に退避をする
他の木の枝が落ちてくる
伐採木の枝等にかかっていた他の木の枝が落ちてきたり、伐採時に周囲の木の枝が折れて、落ちてくることがある。
対策
- 周囲に枝が折れそうな木がある場合などはあらかじめ、安全な退避場所を確保しておいて、伐採後は速やかに退避をする
- 折れやすい木、枝が腐りやすい木などをあらかじめ知っておいて、伐採時には十分に注意をする
つるを飛ばす
伐採作業時、チェーンソーで追い口を作るとき、ツルを切りすぎて飛ばしてしまうことがある。
対策
- 伐採に入る前、伐採木の重心を正しく理解して、ツルを効く厚さにツルを作る
- 芯が腐ってないかを伐採前に叩いて調べる
伐採時に周囲に人がいないか確認する
伐採時、周囲に作業員がいることに気づかずに伐倒してしまい、伐倒木が作業員に当たり、被災する。
対策
- 伐採するときは、経口直径2倍の範囲の中に作業員がいないかを確認する
- 伐採時には、笛の合図をしなくてはならない
- 伐採作業をするときはミーティングをして、全作業員が伐採範囲を把握しておく
上下作業の禁止
伐採した木が滑って、下にいる作業者に当たり、被災する。
対策
- 下方伐採をなるべく避けて、伐採をする
- 上下作業にならないように、必ず事前に打ち合わせをする
- 雨の日など、伐倒木が滑りやすい時は、特に注意をして作業をする
伐採した木の動向
伐採した木が作業者に滑り落ちたり、動くことにより作業者が被災する。
対策
- 伐採者は、あらかじめ倒した木がどのような動きをするのかを予測し、適切な退避場所を確保する
- 伐倒木が思わぬ動きをする場合があるので、木が倒れはじめたら、直ちに退避を開始する
造材作業
造材した材か転がってくる
造材した木が斜面を転がり、他の作業者または当事者に当たり被災する。
対策
- 造材する時は、谷側に体を置かず、山側で造材作業をする
- 造材した材が転がらないように、枝を残しておいたり、つっかえ棒などの処置をしておく
張力かかかっている木の造材
伐採した木が、張力を持って倒れている場合、造材することにより張力が解放されて、作業者に跳ね返り被災する。
対策
- 作業者は、あらかじめ倒した木の形状を見て、どこに張力がかかってるかを確認して、張力を逃がすように造材をする
重機の作業
重機が自重で倒れる
斜面での作業中、重機が斜面でバランスを失い、自重により倒れ被災する。
対策
- 重機のオペレーターは、常に自分の乗る重機の状態がどのようになっているかを把握している
- 斜面に近い場所で作業をする場合は、重機が滑落しないように気にかける
材の重さで重機が傾いたり、倒れたりする
対策
- 材を持ち上げる時は、どこに重心がかかっているのかを判断して、材が重い場合は、材を引き寄せてから持ち上げる
旋回時、移動時の注意
旋回時や移動時、作業員に気づかずに巻き込んで被災する
対策
- 重機の移動、旋回の時は、周囲に作業員がいないことを確認してから行う
架線集材
参照 47都道府県の柱プロジェクト~福岡県②~ (moriwaku.jp)
吊り下げた材が落ちてくる
キャリーで吊り上げた材が、何らかの原因により、落ちてきて作業員が被災する。
対策
- 材の吊り上げ、吊り下げ時に、作業員は架線の近くにいない
- 事前にワイヤーの点検をし、破断していないか確認する
- ワイヤーで材をまとめる時は、切れたり、緩んだりしないように適切な位置につける
架線が断裂する場合がある
何らかの理由により、架線が破断して、搬器や材が作業者に落ちてくる可能性がある
対策
- 架線の下での作業は行わない
- 作業者は、架線の使用中、搬器の動向を気にする
高所作業
架設時の高所作業をする場合、転落などに注意をする。
- 高所作業をするときは、ハーネスなどの安全帯を使用する。
下刈り
キックバックに注意
刈払機作業中に刈払刃が、障害物に当たり、キックバックを起こす可能性がある。
対策
- キックバックをする箇所に気をつけて作業を行う
- 肩バンドをつけて、刃が体に接触しないようにする
作業者同士が近づきすぎない
作業者同士が近づきすぎて、刃が接触する可能性がある。
- 作業が重ならないように事前に作業計画を立てる
作業中に転倒して、刃が体に接触する
- 斜面などの足場が悪いところは転倒しないように十分注意する
- 肩バンドをしっかりして、転倒しても体に刃が接触しないようにする
地形
岩場を歩くとき
岩場を歩く時は、滑りやすく、かまた岩が、転がり落ちて下を歩く作業者に当たる可能性がある。
対策
- 岩場を歩く時は、足を滑らせないように慎重に歩く
- 岩を落として、他の作業者に当てないように気をつける
シダのなかを歩くとき
シダの中を歩く時は、足を取られて転倒する可能性がある。また、蜂の巣があり、刺される可能性がある。
対策
- シダの中を歩くときは足元に気をつけて、すり足で歩く
- 蜂がいるかもしれないので、十分に注意して、周囲に蜂が飛んでいないかを確認しながら歩く
斜面を歩くときに転倒、滑落する
斜面での作業時、または移動時は、足を滑らせて、滑落する可能性がある。
対策
- 足元に気をつけて、直線ではなく、ジグザグに歩く
- 地形をしっかりと把握して、急に勾配がきつくなる箇所は特に気を付けるようにする
- 斜面での作業時は、滑落しないようにハーネスなどの安全帯を使用する
天候
雨の作業時は伐倒木が滑る
雨の日の伐採は、斜面で木が滑り落ちていく可能性がある。
対策
- 雨の日の作業は下方伐採はやめて、被害の少ない伐採を心がける
地面が滑りやすくなっている
雨により地面が滑りやすくなる場合がある。
対策
- 慎重に歩くことが求められる
- 濡れた岩や木の上などは滑るのでなるべく乗らないようにする
急な天候の変化
急に天候が変わり、豪雨や落雷が起こる可能性がある
対策
- 天気予報を気にして常に備えておく
- 雷が鳴り始めたら避難をする
暴風で伐採木が煽られて危険
暴風により、伐採しようとした木が煽られて、伐倒方向がズレたり、折れる可能性がある
対策
- 風の強い日は、伐採作業を行わない
- ツルをしっかりと作り、 風に煽られても方向がズレないようにする牽引をする
生物
蜂に注意
作業中、蜂に刺される可能性がある。
対策
- 周囲に蜂の巣がないか気にしながら作業をする
- 草むらなど視界が悪いところに入る時は、特に注意をする
ヒルに注意
ヒルがいるような場所での作業は、注意をして作業する。
対策
- ヒルが出やすい地域では、ヒルよけのスプレーをやっておく
- 休憩時間にヒルがついてないか、確認する
マダニに注意
マダニがいるような季節はマダニに咬まれないように注意する。
対策
- マダニがいるような草むらの中に入った時はマダニがついていないか確認する
- 休憩時間などに、こまめに確認する
- 作業前にマダニを寄せ付けないスプレーを散布する
季節
夏の作業
夏は熱中症などにより体調不良を起こしやすい。
対策
- こまめを水分を取る
- 体調が悪くなったらすぐに日陰で休む
- 直射日光を浴びない工夫をする
- 空調服などを着る
冬の作業
冬は体が思うように動かず、怪我をしやすい。また、血行不良によるぎっくり腰や振動障害などに注意する。
対策
- 暖かい恰好をする
- お風呂に入る時は、湯船につかるなど血行を良くするように努める
- 準備運動をして筋肉をほぐす
- 振動が起こるものに触れている時間を短くする
さいごに
毎日の作業前ミーティングでKY活動をすることは、安全に作業をする上で大切なことです。
しかし、毎日の事なので、つい、流しがちになり、軽視してしまうのも事実です。
たった一回のミスが命取りになる場合があるのが、林業です。
KY活動とは、そんな先人たちの失敗を知ることで、わが身に置き換えて、日々、安全作業を心がけるためのものです。
作業前に、そのことを意識するだけで、ずいぶんと安全に対する心構えが変わってくるのではないでしょうか。