どうも、元フォレストワーカーのkitajinです。
本記事では、架線集材とは?から、林業架線主任者の国家試験についてを紹介しています。
事業体で架線集材をおこなっている人には、馴染みのあるかもしれませんが、作業道などで搬出作業をおこなっている事業体では、あまり知らない人もいると思います。
ボクが働いていた事業体では、架線集材をおこなっており、入社当時から、架線集材になじみがありましたが、なかなか覚えるのが大変でした。
また、林業架線主任者の資格を取得したのは、入社して4年目のときでした。
本記事では、架線集材とは、どういうものなのか、林業架線主任者の資格の取得方法、また、試験はどの程度、難しいものかなどを、詳細に紹介しています。
林業架線主任者の資格に興味をお持ちの方は、ぜひ最後までお読みいただければと思います。
この記事を書いた人
- 静岡県浜松市で10年間林業に従事
(素材生産業者で伐採を主にやっていました)
- 林業に関する基本的資格はすべて取得
(林業架線作業主任者の国家資格取得者)
- 林業の情報を発信したくて林業ブログを運営
(運営歴1年の新人です)
林業の魅力や重要性などを実体験を通して発信していくつもりなので、林業に転職を考えている方は参考にしてください。
※本記事には、プロモーションが含まれています。
架線集材とは?
林業架線作業主任者とは?
林業架線作業は、伐採した木材を山から運び出す作業のことです。作業には機械集材装置や運材索道などが使用されます。
林業架線作業主任者とは、労働安全衛生法に定められた作業主任者(国家資格)の一つであり、林業架線作業主任者免許を受けた者の中から事業者により選任される。森林で栽培した原木を、木材加工場まで運び出す際に使用する機械集材装置や運材用空中ケーブルなどの設備の設計・組立て・解体・変更・修理および運転などに携わる責任者のことです。
作業としては、以下の通りです。
- 架設する場所を決める
- 木を伐採する
- 集材装置を架設する(木を切る前に架設することもある)
- 伐採した木を集木し、搬出する
- 木を山から下ろし終えたら、架線の撤去
架線集材をする場合、作業主任者が現場に一人いないと、架設から、搬出、撤去までが行えないことになっています。
※資格を取得するには、林業に関する包括的な知識とスキルが必要で、林業架線作業の実務経験が3年以上あることが求められます。
架線集材の種類
林業架線集材には、様々な種類があります。
なぜ種類が分かれているかというと、地形や木の形状により、搬出に適した架設方法があるからです。
ここでは詳しく紹介しませんが、知りたい方は、下記のURLをご覧ください。
架線集材が役立つ場所
架線集材が主に活躍する場所は、作業道がつけられない、勾配のきつい場所に適しています。
- 急勾配地
- 谷をまたいでいる
- 他人の地所をまたいでい
- 岩場などで道が作れない
実際に行った現場例
民家の畑をはさんで
民家の裏山にある木を搬出しようとした時、間にみかん畑があり、作業道をつけることができないので、索張りをしました。
山に先柱を設置して、索道を通し、民家の横にある畑に土場を作り、下ろすようにしました。
元柱がなかったため、畑を掘り返し、アンカーを埋めて、その先に元柱を作りました。
トラック道をはさんで
山の中に、道路工事の残土置き場を作るという現場で、山の木を全て切り倒し、搬出する作業をするために索張りをしました。
その現場では、多くのトラックが走っていることで、作業道は作れず、現場から、一つ谷を越えた山道に搬出するために索道を設置するという工程をふみました。
すり鉢状の谷をはさんで
すり鉢状の谷が2つ連なった現場で、急こう配な地形で、作業道がつけられないことから、索道をすり鉢の上を通過させ、搬出させる方法を取りました。
途中までは、道がつけられていたので、そこに土場を設置して、途中にある稜線の上に、木が立っていたので、線が垂れ下がらないためにシーソー滑車をつけて工夫しました。
稜線から先が見えない現場だったので、無線機を使って、集材機のオペレーターに指示を送りながらの搬出となりました。
収入と将来性
架線作業主任者の資格を取ることで、給料に反映するかどうかは、各事業体によって変わります。
ボクが働いていたところでは、資格を取っただけでは、給料に反映されませんでしたが、現場で、林業架線主任者になると、その月の給料に技術手当が5,000円つきました。
また将来的には、架線集材は無くならないと思います。索道での搬出は、山を荒らさない搬出方法として見直されているからです。
現在主流になっている作業道での搬出は、山を痛めて、土砂災害を起こすなどの問題が分かってきたので、今後は、索張りをして、搬出をするほうが良いという方向になるかもしれません。
しかし、後ほど紹介しますが、索道のデメリットがあるので、なかなか広がりづらいというのが現状です。
それでも前述のように、索道でないと搬出できない現場も多いので、自然災害の点からも考慮して、今後は索道を採用する事業体が増えてくるかもしれません。
架設は難しいか?
試験のことは後ほど語りますが、索張りは、難しいかについて紹介します。
あくまでも個人的意見ですが、正直、最初は何をやっているのか、さっぱり分かりませんでした。
索張りの基本は、先柱と元柱の二本の柱の間にワイヤーを通し、搬器を行き来させて、木材を搬出します。
搬器には、木材を上げ下げするワイヤーの先端に鉤づめがついており、搬出する木にワイヤーをつけて、鉤で吊って、土場まで移動します。
何が難しいかというと、木の重さを吊り上げるために、十分な強度を持っていないといけないのが一点。
傾斜角度や木の重量、移動距離などによって、変化するので、様々な要素が働きます。
また、ワイヤーロープを数十メートルから数百メートルの距離まで伸ばしながら、運ばなければいけないのも、難点です。
ワイヤーは針金が幾十にも巻き付けられたものであり、人の手で何十メートルも運べるものではありません。
上手に伸ばしていかないと、途中で絡まったり、キンクしたりすることもあります。
他にも、ワイヤーを繋いだり、編んだりする?ワークなどの知識がないと、索張りすることはできないので、幅広い知識を要します。
架線集材のメリット・デメリット
○メリット
- どんな場所でも搬出できる
- 木に優しい
- 山にやさしい
○デメリット
- 架設に人工を使う
- 出材量が少ない
- 経験がいる
メリット
どんな場所でも 搬出できる
前述のとおり、架線集材はあらゆるところで、使えます。
何しろ、一昔前は架線集材が主流であり、全ての作業現場は、索道で搬出していたのです。
ですので、どんな山であろうが、搬出ができない山はありません。
また、山だけではなく、例えば、里山のような民家があるところでも、先柱さえあれば、元柱はタワーヤーダなどを使い、索張りは可能です。
木に優しい
現在は、高性能林業機械により、1本の木を伐採、枝払い、造材と一気にできます。
早くていいのですが、そういう作業をしていると、どうしても木を傷つけたり、皮が激しくめくれてボロボロになったりします。
索道で搬出する場合は、木を傷つけずに、搬出することができます。
山に優しい
作業道をつける場合、どうしても重機が通る道を作るために、土を掘り返し、山を削るという作業が必要になってきます。
山に手を入れることは、どんなに気をつけても、雨などで地盤が削れたり、崩れやすくなります。
しかし、索張りはをする場合は、必要最低限の木を切り倒し、 架設に必要な線と搬出材の通り道を作るだけなので、わずか、1、2m の間隔があければいいです。
山の地形を利用した、山に優しい搬出方法です。
デメリット
索張り、撤去に人工がかかる
索張りは、作業工程が沢山あり、また、人の手で道具の移動をする場合が多いので、人工がかかります。
一番簡単な索張りでも、二人工はかかります。
また、作業道を作るつける場合は、重機の一台とチェーンソーを持っていれば一人、ひとりでもできますが 、索張りをひとりでこなす場合は、大変な労力を極めます。
最低でも二人は必要で、元柱側と先柱側に分かれて作業しないと、適切な索張りできません。
また、先柱に資材を持っていくのは、徒歩であり、(林道がある場合もあるが)重い荷物を背負って、登山者のように山道を歩きます。
搬出量が少ない
作業道に比べ、索道があまり普及しないのは、索張りに人工がかかるのと、もう一つは、搬出量が少ないことが特徴です。
理由としては以下のとおりです。
- 搬器が行き来する時間がかかる
- 一度に吊るせる木材の量に上限がある
- 搬出するのにも時間がかかる
- トラブルがおこりやすい
特に、トラブルは頻繁に起こります。
ワイヤーが破断するのは、しょっちゅうなので、つなぎ合わせたりします。
搬出量の目安は、作業道の半分以下と言ってもいいです。
索張りはある程度経験が必要
索張りは、ある程度の経験が必要です。
3年以上の実務経験がなければ試験が受けられないのも、試験に受かったとしても、実務で索張りが、できないからでしょう。
やはり、索道は、搬出の方法を知っているだけでは駄目で、様々なトラブルを経験しなくては、1人前になれない、というところではないでしょうか。
向いている人
個人的な考えですが、林業架線作業主任者の資格をとり、実務に活かせる人は、モノづくりが好きな人に向いていると思います。
索道の醍醐味は、どこに線を張れば、一番最適に木材を搬出できるかです。
また、どんな方法をつかって索張りするかも重要であり、それらを組み合わせて、上手く搬出できるかで、搬出量は大きく変わってきます。
その裁量を任せられることが、やり甲斐があると思える人が、向いているのではないでしょうか。
架線集材試験の難易度
難易度
林業架線作業主任者の国家資格は、一般的に難易度が中程度と言われています。(合格率は60%です)
どなたでも受験できますが、免許申請の際に実務経験(林業架線作業の業務に3年以上従事した経験を有する者)を証する書類の添付が必要です。
2022年の林業架線作業主任者免許試験の合格率は66.4%で、受験者数は143名でした。
出題範囲・試験の内容
試験は4つのカテゴリーから出題されます。
- 機械集材装置及び運材索道に関する知識
- 林業架線作業に関する知識
- 関係法令
- 林業架線作業に必要な力学に関する知識
試験は選択式です。出題される問題に対して正しい選択肢を選ぶ形式です。
試験時間は180分で、科目免除者の場合は135分です。試験時間内に各科目に関する問題に回答する必要があります。
合格の基準は、総得点が満点中60%以上の得点率である必要があり、さらに各科目については満点中40%以上の得点率を達成する必要があります。
受験料:林業架線作業主任者免許試験の受験料は6,800円です。合格しなかった場合でも受験料は返金されません。
試験について
試験会場:試験会場は主要な地域に設けられており、北海道センター、東北センター、関東センター、中部センター、近畿センター、中国四国センター、九州センターで試験が実施されます。受験者は最寄りのセンターを選択することができます。
試験日程:林業架線作業主任者免許試験は、各センターで年1回、通常は6月もしくは12月に実施されます。
申込み期間:試験の申込み期間は、実施センターによって異なります。受験を希望する際には、各センターの公式情報を確認して申し込み期間を把握しましょう。
合格発表日:合格発表日も実施センターによって異なります。合格者についての情報を入手するために、各センターの公式情報を追跡しましょう。
詳しくはこちら 財団法人 安全衛生技術試験協会
免除対象者と免除科目
林業架線作業主任者免許試験における免除制度は、特定の学歴や資格を有する者に対して一部科目を免除する制度です。以下はそれぞれの免除対象者と該当する免除科目の一覧です。
免除科目 | 免除対象者 |
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林業架線作業に必要な力学に関する知識 | 学校教育法による大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校を卒業した者、または同法による専門職大学の前期課程を修了した者 |
林業架線作業に必要な力学に関する知識 | 大学改革支援・学位授与機構により学士の学位を授与された者 |
林業架線作業に必要な力学に関する知識 | 省庁大学校を卒業(修了)した者 |
林業架線作業に必要な力学に関する知識 | 専修学校の専門課程(2年以上・1700時間以上)の修了者(大学入学の有資格者に限る)、その後大学等において大学改革支援・学位授与機構により学士の学位を授与されるのに必要な所定の単位を修得した者 |
林業架線作業に必要な力学に関する知識 | 指定を受けた専修学校の専門課程(4年以上)を一定日以後に修了した者など(学校教育法施行規則第155条第1項該当者) |
これらの免除制度に該当する者は、林業架線作業主任者免許試験を受験する際に、力学に関する知識に関する一部科目を免除されるため、試験の受験がスムーズになります。
最後に
架線集材は、山を傷つけない搬出方法であると、再び、注目を集めています。
近年の自然災害の多さで、作業道の崩落などが顕著になってきているからです。
しかし、実際に索張りをするとなると、作業道の方がはるかに早く、また、搬出量が多いのも事実です。また、架線集材は覚えるのも大変で、長い時間を要します。
それでも、架線集材の技術を使えるかどうかで、作業の範囲も変わってくるので、 林業架線作業主任者の免許資格は、是非とも資格を取っておきたいところです。
試験に合格すれば、林業分野でのキャリアや収入を向上させることができ、自信にもつながります。
試験を受ける際は、しっかりとした試験対策を行い、合格を目指しましょう。