林業一年目

林業を10年間続けてみていろいろと思ったこと

kitajin

どうも元フォレストワーカーのkitajinと言います。

本記事では、10年間林業に携わってきたボクの林業に対する感想を述べています。

10年間働いていると色んなことを思うわけで、正しい正しくないかは置いておいて、いろいろと疑問もありました。

そんな感想を述べることにより、今働いている人、これから働きたい人、そして、同じように辞めてしまった人が、林業について考えるきっかけになってくれればと思います。

この記事を書いた人

kitajin
  • 静岡県浜松市で10年間林業に従事

(素材生産業者で伐採を主にやっていました)

  • 林業に関する基本的資格はすべて取得

(林業架線作業主任者の国家資格取得者)

  • 林業の情報を発信したくて林業ブログを運営

(運営歴1年の新人です)

林業の魅力や重要性などを実体験を通して発信していくつもりなので、林業に転職を考えている方は参考にしてください。

※本記事には、プロモーションが含まれています。

この記事には、筆者の個人的な見解が含まれていますが、合わせて、それを裏付けるデータも掲載しています。

10年間働いてみて感じたこと

皆伐
今もボクの伐った切株が残っている

続けることは 向いてる人にとってはそんなに大変ではない

林業を辞めて思ったことは、林業の作業はそれほど辛い仕事ではないということです。

これは、完全に個人的感想なのですが、しかし、3年続いた人なら、林業はそれほど厳しい職業とは思いません。

仕事自体は、慣れればそこまで難しいこともありませんし、3年も経てば気候にも慣れてきて、体が順応していきます。

しかし、これはたった10年のキャリアのボクが言っているのですから説得力がないかもしれません。

それでも、より長く続けるために重要だと思うのは、モチベーションと肉体のケアでしょう。

年月が経てば、段々と歳をとり、その分、体の融通もきかなくなるし、肉体のケアは必須になります。

また、体の不調は、精神にも影響を及ぼすので、モチベーションの低下にも繋がります。また、その逆もあり、モチベーションが下がると、体の動きも鈍くなり、仕事の効率も下がります。

健康に気を使い、モチベーション低下を起こさないようにすることが大切です。

施行地は、やりやすいところばっかり進んでいて、やりづらいところは残っている

日本の国土面積の約70%が森林と言われています。

面積当たりの森林率では、先進国の中では世界第2位だそうです。

しかし、実際に林業として生計が成り立つ山は、非常に少ないと言われています。

材木を搬出しても、経費の方がかかって採算が合わないのです。

なので、森林放置というの問題が起きます。

森林放置とは、所有者が分からなかったり、誰も手を付けたがらない人工林のことをいいます。

それだけ、現在の林業に適した山が少ないというのが、日本の林業の現状です。

実際、ボクが働いていた時も、林道から近くの現場ばかりやっていました。

一度、会社から現場の山まで行くのに1時間、車を降りて山の中を歩いて30分という現場をやったことがありますが、そこは、林道からは遠く、現場まで行くには、幾つもの所有者の地所を通らないと行けない現場でした。

当然、そこは搬出するのではなく、切り捨て間伐をしてお仕舞となりました。

そういった山の木を搬出できるようになるには、何かしらの技術革新がないと無理かもしれません。

参照 森林放置という環境問題 | Rotation(ローテーション)

扱いづらい太い木が残る可能性はないか

木は、樹齢を重ねるほど、太くなり、業としては扱いづらくなっていきます。

価値がある木ならいいのですが、そうでない場合は、搬出のコストとどちらが掛かるのかを考えなくてはなりません。

ウッドショックで、外国材が入ってこなくなってからは、国内材の価格も安定しているかもしれませんが、少し前までは国内材は安くて、扱いやすい手ごろな木が喜ばれていたことも事実です。

現在、植えられている木は、戦後に植えられたものが多く、だいたい樹齢が80年ぐらい経っています。

その80年経った太い木を伐採して、運んで製材にかけるまでの工程が、非常に手間がかかり、あまり効率的とは言えないのはないかと、働いている時は思っていました。

木材って本当に売れてるの?

ボクが林業やってた頃、毎日最低1人、3㎥以上の材木を山から搬出せよ、会社から言われていました。

3㎥の杉なり檜が製材されて商品になって売れていくということを考えると、そこまで木材の需要があるのかなと、ふと疑問に思ったことがあります。

木材製品は出来上がったら、消費されていく訳ではないので、当分の間は地上に残ります。

それだけの木を製品にして、売りさばいているのかイメージできませんでした。

家を建てる人が少なくなり、建材だって、製材を使うことが少なくなり、鉄筋をはじめ、合板や集成材などもあるのだから、昔より確実に木材を使う量は減っているはずです。

国内材の生産量は平成29(2017)2141㎥であり、一戸当たりの木材使用量は下の引用を元にすれば、23.7㎥で、一年あたりの新築住宅着工戸数は、平成30(2018)年は前年比1%減の54万戸となっている。

単純計算で、23.7×594000=14,077,800㎥となる。

参照 第1部 第3章 第1節 林業の動向(1):林野庁 (maff.go.jp)

住宅工法や施工方法によっても違うのですが、一般的な木造在来工法による住宅では、(社)日本木造住宅産業協会のデーターによれば、延床面積128㎡の住宅には一棟あたり23.7m3の木材が使われているようです。

1㎡あたり0.185m3になります。

当協会の工務店(㈱建築士事務所民家)では、128㎡であれば54m3になり、1㎡当たり0.42m3の木材が使われています。

8. 木造住宅にはどれくらいの木材が使われていますか | 国産材のあれこれ|国産材住宅推進協会 (kokusanzai.org)

昔の人ってすごい

林業に、高性能機械が導入されたのはわずか30年足らずのことです。

だから、分かるのですが、昔の人の体力がいかに凄いかを。

いろいろと話を聞いて驚いたのですが、例えば、昔のチェーンソーはすべて鉄でできていたので、相当重く、また振動も凄かったそうです。

また、昔はソリで材木を運んでいたといいます。その他にも、牛や馬、更に材木を担いで山から下ろす専門の人がいたそうです。

3メートル、直径20センチの杉なら軽々と肩に担いで山を下りたというのですから驚きです。

 重さ(kg) = 体積(㎥) × 比重(g) × 1000

 0.12㎥×0.38×1000=45.6kg(0.38は気乾比重)

昔は、冬に木を伐り、夏ごろまで乾燥させていたというから、かなり軽くはなっているでしょうが、それでも約50㎏を背負って、山を下りていたことになります。

彼らの肩には、ふさふさと毛が生えていたといいます。

何も知らなかったし、知ろうとしなかった

林業に従事している時のボクは、とにかく疲れていました。

林業だけに注力できず、迷いがありながらダラダラと続けていたことで、精神的な疲れと肉体の疲労とが重なっていたからです。

ですので、日々の仕事以外は、何も知りたいと思いませんでした。

自分の伐った木がどういった経路で、どんな製品になるのか?いくらで取引されているのか?会社は儲かっているのか?など、ほとんど気にしていませんでした。

業界への興味のなさが、林業を辞めた理由の一つです。

人間関係が分かりやすく出る

林業は狭い世界なので、相性による人間関係が明確に出ます。

特に毎日顔を合わせる班の人との関係は、気を付けないといけません。

こんなことがありました。

とある事業体に先に入っていた林業2年目と、後から入った林業歴20年の人が一緒に組んで仕事をすることになりました。

年齢も、先に入った2年目の人が一つ上でしたが、一緒に仕事をしているうちに、非常に仲が悪くなっていきました。

いろいろとあったようですが、主な原因は、先に入った2年目の人が、「自分が先にこの会社に入ったから、俺の方が先輩である。だから、偉そうに仕切られるのは我慢ならん」というのです。

確かに、20年目の人は、2年目の人をかなり雑に扱っていたようですが、20年目の人にとってみれば、それが普通だったかもしれません。

結局、2年目の人は、会社に不満を持ってやめていきました。

このような事例が、数多くあるのが林業です。

浜松の林業は恵まれている

ボクが林業をやっていた浜松は、気候がよく、天気は晴れが多く、雪も降らず、年間雨量は100日位です。

また、地形も割と穏やかであり、林道の整備もされています。

特に天竜区は昔から林業が盛んで、全国的にも知られているので、林業に関する考え方が浸透しています。

そういう環境で、仕事ができるというのは恵まれているのではないでしょうか。

林業業界は閉塞的

林業を取り巻く状況として、従事者の高齢化と農村部での仕事ということもあり、閉塞的なイメージがありました。

林野庁の取り組みでは、新しい人材の育成などに力を入れているようですが、実際作業をしている素材生産業者は、家族経営が多く、未だに古い考えでやっている人たちも多かったです。

家族のみでやっているのならそれでも構わないのですが、外から人を入れようとすると、時代に合わない考えのままだと従業員は困ります。

また、雇用主と従業員という関係だけでなく、山主と事業体という関係も閉塞感があります。

昔からの付き合いの森林組合に任せっきりだったり、自分の山を放ったらかしにしている山主が多く居るのも事実です。それが森林放置という形になって表れています。

ボクが、こういうブログを運営していることに関しても、「辞めた人間がごちゃごちゃ言うなよ」的な意見もいただきました。

そういう意見も閉塞感を感じる一因となっています。

業界全体が、何処から見ても、風通しのよい環境であることが林業の発展に繋がるように思っていました。

林業業界も変革期

現在、あらゆる産業や社会が変革のまっ最中です。

よく言われているのが、DX ですが、林業業界にも、DXの波が強くなってきているように感じます。

その主なモノが、林野庁が進めているスマート林業なるモノではないでしょうか。

近年、ICTなどの新技術の開発が著しく進展していますが、森林・林業分野においても、新技術を積極的に活用し、森林管理や林業の効率化等を図ることが期待されています。

林野庁では、森林管理の基礎となる資源情報の高度化、データや最新技術を活用した「スマート林業」を推進しています

森林資源情報のデジタル化/スマート林業の推進:林野庁 (maff.go.jp)

前述のように、個人的に閉塞感のあると思っていた業界ですが、確実に新しい世代へと世代交代も行われてきていますし、新しい林業への取り組みも盛んにおこなわれているようです。

今後どのように変化するか分かりませんが、十分期待が持てるような予感がします。

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最後に

kitajin

ずいぶん勝手なことを書いてきましたが、これが10年間林業に従事していたボクの感想です。

10年もやっていて、これしかないのは、我ながら、浅いなと思います。

林業には大変なことも多いですが、魅力があるのもまた事実です。

また、人によっての向き不向きもあり、向いてない人にとっては、この上なく苦痛の仕事だと思います。

向いている人にとっても、決して楽ではなく、時に苦痛を伴いますがその分やりがいがあるのも事実です。

林業に携わるすべての人が、やりがいのある仕事と思えるように発展していく事を願わずにはいられません。

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