降水日数(年間)の日本全国(都道府県)平均値は、120.32(日)です。
※この平均値は、2020年の総務省による統計ダッシュボード調査データで確認できる47の都道府県の合計値「5655(日)」を都道府県数で除算して算出しています。
降水日数(年間)の日本全国ランキング(都道府県別) | GraphToChart
ちなみに、我が静岡県は中央値と同数の108日でした。
林業では、雨の日に現場に出て、作業をするかは各事業体によって異なります。
しかし、年間100日以上雨で作業がストップしてしまうと、現行の林業では、事業が成り立たずとても生活ができません。
なので、雨の日に作業する事業体も数多く存在します。
作業内容も事業体によって異なり、晴れの日と変わらない作業をする事業体もあれば、伐採作業だけやらなかったり、普段できない機械のメンテナンスや道具の整理をしたりする事業体もあります。
また、素材生産の他に製材などを手掛けている事業体では、そちらを手伝うこともあるようです。
いずれにせよ、雨の日でもなにかしら仕事を見つけてやるのが林業です(もしくは、休日を雨の日と入替えする)。
そして、雨の作業はいつもより危険が伴うので、慎重にならなくてはいけません。
では、 一体どんなところが危険を伴うのか、またどんなことに気をつけているのかなど、雨の日の作業についてお話ししていきたいと思います。
これから林業に就こうと考えているあなたの参考になれば幸いです。
この記事を書いた人
- 静岡県浜松市で10年間林業に従事
(素材生産業者で伐採を主にやっていました)
- 林業に関する基本的資格はすべて取得
(林業架線作業主任者の国家資格取得者)
- 林業の情報を発信したくて林業ブログを運営
(運営歴1年の新人です)
林業の魅力や重要性などを実体験を通して発信していくつもりなので、林業に転職を考えている方は参考にしてください。
※本記事には、プロモーションが含まれています。
雨の日の作業風景
雨の日は通常作業の1.5倍疲れる
雨の日はいつもより1.5倍疲れます。
雨に濡れるという心の負担もありますが、その他にもカッパや長靴を装備していることが疲労へとつながりるのです。
カッパや長靴は動きにくく、かつ着ているだけで暑いのでかなり汗をかきます。
更に、普段より安全に動こうとする意識が働くので気疲れします。
雨の日は通常の2倍よく滑る
雨の日はいつもの2倍よく滑ります。
斜面だと地面が泥状となり滑り、枝や伐倒した木の上に乗っても滑ります。特に樹皮が剥がれた部分は本当によく滑ります。
最もよく滑るのが竹の上です。
倒した竹の上というのは普段でも滑りやすく、雨が降ると摩擦抵抗がなくなります。また、スパイクが付いた靴でも、スパイクが刺さらないので用をなしません。
万が一、雨の後に倒した竹の上を歩くときは充分に注意してください。
雨の日は通常の3倍汚れる
雨の日は通常の3倍汚れます。
特にチェーンソー作業してる時は、木屑が、雨に濡れた全身に纏わりつき、ドロドロになります。
木屑というのは、木の屑だけでなく、樹皮の表面についた泥や藻なども一緒に切っていくので、細かい埃が雨と混じり合い泥のようになるのです。
また、重機が通ると作業道はぬかるみ、歩けば泥の跳ね返りや、枝葉を伝って落ちてきた雨には、なにかしらの不純物を多く含んでいるので体を汚します。
その上に風が吹けば、落ち葉などが降ってきます。
雨の日は通常の4倍危険
雨の日は、いつもの4倍危険です。
雨の日の作業が危険なのはいくつかの要因があります。
まずは、前述したようによく滑ることです。
自分も滑りますが、雨の日は他のモノもよく滑ります。特に杉の下方伐採は、雨に濡れているとどこまでも滑って落ちていくのでとても危険です。
次に危険なのは、集中力が散漫になることです。
雨が降っていると、いろんなことが気になり、どうしても集中力が途切れます。
また、前述したようにカッパでの作業は動きづらく、足元も悪く、おまけに動きにも制限を受けるのだから危険なのは当然です。
他にも、雨の中は視覚や聴覚が奪われるのも危険なことです。
よく見えない、聴こえないでは危険を察知することができません。
最後に、予期せぬことが起こる危険です。
雨が強く降れば、普段の道が川のようになったり、路面が削れてがけ崩れが起きたり、岩が転がったりする可能性があります。
雨の日の注意点
雨の日はどのようなことに気を付けるべきなのでしょうか?
足場の確保
雨の日の注意点、一つ目は足場の確保です。
常に自分が歩く場所を見て、危険でないかを判断しながら歩く。また、転んでもいいような軽装、危なくない装備のしかたなどに気を遣わなくてはなりません。
昔、聞いた話に、「腰袋に、ワイヤーを編むシノーという先の尖った道具を差していて、転んだ拍子にシノーが腹に突き刺さった」という人がいたそうです。
なので、雨の日の作業では、なるべく軽装で受け身が取りやすいよう片手はフリーにして歩くか、転ばない道を選ぶかです。
作業道が崩落する
通常の雨なら、そんなことはないのですが、雨量が多いと作業道が崩れたりします。
特に即席で作ったような作業道は、土を掘り返して簡易的に固めただけなので大雨の対策がされていません。
もちろん、雨を見越して側溝を掘って対策をすることもありますが、大量に雨が降るとその役目を果たしません。
現状、たくさんの現場で大雨の影響で、作業道が崩れ、山を破壊しているという事例が報告されています。
参照 無謀な森林伐採が「土砂災害」を招いている事実 | 意外と知らない「暮らしの水」ウソ?ホント? | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)
山の斜面を切り崩して作る作業道が、大雨に強いわけがありません。
風邪をひきやすい
風邪を引きやすいのは、作業時と、休憩や終業時での急激な体温変化があるです。
前述しましたが、カッパを着ると体中に汗をかき、雨には濡れませんが着ている物をずぶ濡れにさせます。ヒドイとほとんど雨に濡れたのと変わらない状態になるのです。
濡れた服を脱がないまま休憩したり、帰ったりすると、体が熱を奪われて寒さを感じます。
急激な体温変化が風邪を引きやすい要因となるのです。
チェーンソーが壊れる
雨の日のチェーンソー作業は、チェーンソーを壊す原因になります。
林業で使うチェーンソーは、ガソリンと混合オイルで可動いています。
ですので、エンジンを燃やすために酸素を取り込むフィルターが付いています。雨の日は、フィルターが木屑などのゴミと共に、水分を含んだ空気を吸い込み、フィルターの空気穴を塞ぐのです。
また、燃料にも雨の影響があります。
ガソリンタンクに水が入った場合、エンストを起こす場合があります。場合によっては、しばらく動かなくなってしまうこともあります。
チェーンソーは、雨の中で作業するようにできていないので、説明書にもそう書いてありました。しかし、それでもチェーンソー作業をする事業体はあります。
雨の中でチェーンソーを使用していて、万が一エンジン内部に水が入ってしまうとガソリンやオイルと干渉しエンジンが不安定になったり、エンジン内部でオイルが回らずに潤滑が切れて焼き付きを起こしエンジンが完全に壊れてしまう場合もあるのです。
焼き付きを起こしてしまっった場合にはシリンダーやピストンの交換が必要となり修理費が高くついてしまいます。作業日の天気予報を確認するのは当然ですが天候の変わりやすい山間部においては雨の兆しを感じたら速やかに作業を止め、様子を見るなどの対策が必要です。
チェーンソーは雨の日でも使える?使えない?|チェンソーなら農機具のアグリズ! (agriz.net)
いろんなところがサビる
林業の道具は、様々なところに鉄性のモノを使用しています。
なので、雨の作業を終えてそのままにしていると、いつの間にかサビていることがあります。
サビても使用できますが、サビは強度を下げるので、林業では使えない道具になってしまいます。
雨の日の格好
雨の日は、普段より危険なだけでなく、汚れやすく壊れやすいので、作業をする時は、あまりいい物を身につけていない方がいいです。
特に合羽は、枝などに引っ掛けて、驚くほどあっけなく破れて使い物にならなくなります。あまり高い物を買っても勿体ないですし、かと言って、安物は耐久性がなく破けるので悩ましいところです。
カッパ
雨の日の作業着として、まず思い浮かぶのはカッパではないでしょうか。
しかし、合羽を林業で使う場合、かなり吟味して選んだ方が良いです。というのが、安物だとすぐに破れてしまい、高くても破れる場合があり、ボクの経験上一年間、無傷だったためしがありません。
合羽は、ワークマンなどで安くて2000円、高くても8000円くらいで売っていますが、高くても初日にビリビリに破れて使い物にならなくなったということを経験したことがあります。
原因は、いろんなところに引っ掛けるからです。
雑木林の中を歩いている時のイバラや伐倒木の枯れ節など、気を付けているつもりでもつい破いてしまいます。
せっかく買ったカッパが、初日で破れるという悲劇は本当にショックです。
中には、軍人用みたいな強度があるカッパも売っていますが、しかし、非常に重く、柔軟性もないので動きづらいのが特徴でした。
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長靴
長靴も、通常に売ってるような長靴では強度がなく、すぐにひっかけて穴があいてしまいます。
作業用の長靴にするか、または林業に特化したスパイク付きの動きやすい長靴も売っています。
林業用のゴム足袋長靴は、足袋のような形でになっており、斜面での踏ん張りもきくので、滑らずに通常と同じような動きができます。
ただし、前述したように、長靴を履いても足が蒸れて靴下がぐちゃぐちゃになるのは避けられません。
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ヘルメット
ヘルメットは、頭を守るだけでなく雨からも守ってくれます。
ヘルメットも蒸れますが長靴やカッパなどと比べるとマシで、むしろヘルメットを被ることによって、雨から守られる恩恵の方が大きいです。
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防振手袋
チェーンソーは、基本的に雨の日には作業しないと想定して作っているので、当然、防振手袋も雨用にはなっていません。
ですので、雨に濡れると水を含みぐちゃぐちゃに濡れて重くなります。
現在では、防水の作業用手袋が売っているので、それを付ければいいかもしれません。
しかし、ボクは使った事がないのでわかりませんが、もしかしたら、チェーンソー作業には向かいないかもしれません。
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腰袋
雨の日のチェーンソー作業時に腰袋を下げたりすると、木屑が腰袋の中に全部入ってきて木屑だらけになります。
なので雨の日のチェーンソー作業の時には、腰袋は着けないか、カッパの中で入れて作業してました。
また、雨の日に腰袋を付けて作業すると痛むのが早く、買い替え時期が早まります。
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雨の日の少し良いところ
今までは、雨の中の作業は重労働で危険なだけと書いてきましたが、少しだけよい点もありますのでご紹介します。
非日常感が味わえる
山の中の雨は、下界ではなかなか味わえない非日常感があります。
雨に濡れた草木だったり、樹木の幹に雨がつたうのを見ていると、穏やかな気持ちになります。
また、どういう原因か分かりませんが、木から泡が吹いてきたりします。
また、霧が発生して視界を塞いだり、静まり返った中で雨音だけが聞こえると、神秘的な雰囲気があります。
仕事がはかどることもある
雨の日の作業で、仕事がはかどる場面があります。
それは集木です。
前述に雨の日はよく滑ると書きましたが、その滑りを利用して木を滑らせて、木を集めるのです。
昔は、重機などがない頃は、木を滑らせて集木するのは当たり前にやっていました。
ボクも、雨の日に造材した木をトビで斜面を滑らせ落とす作業をしたことがあります。
早く仕事が終わる
ボクが勤めていた事業体では、雨の日の作業は早く終わることが多かったです。
誰もが雨の中の作業をあまりしたくないので、班長が、なるべく早く終わるという判断をしてました。
ボクが働いていた事業体では雨の日にチェーンソー作業を普通にやっていたので、チェーンソーが止まり、作業ができなくなるいうこともありました。
雨の日を乗り切るための心得
もし、雨の日の作業をするようなことがあれば覚えておいてください。
いつも以上に安全に気を使う
何度も言っているように、雨の日の作業は危険を伴うので、いつも以上に安全に気を使うというのはごく自然になってきます。
特に足場は、一歩ずつ確かめながら歩くことが重要です。
いつもよりも頑張らない
頑張りすぎると、最初はいいのですが、すぐにエネルギー切れを起こします。
エネルギーが無くなると、焦ったり判断が鈍るので、最初からゆっくり仕事をするようにした方が安全に作業ができます。
また、雨の日は疲れを溜めやすく、翌日以降に響くかもしれませんので、仕事が終わったら十分な休息を取るようにします。
童心に帰る
雨の日の作業は精神的にキツイものがあります。
人間は水に濡れるということが苦手な生き物であり、特に日本人は、外国人と比べて雨に濡れるのを嫌うと言われています。
しかし、子供の頃は雨に濡れても気にしてなかったので、いっそ童心に帰るのというのはどうでしょうか。
いつもより早く終わりアフターケアをしっかりする
仕事を早く終わり、道具の汚れを落とし、チェーンソーのメンテナンスをする。
そして、家に帰り、あったかい湯船に浸かり汚れと体の疲れを癒すのです。
それを若いから大丈夫だと言って、いつもと同じようにしていると、風邪を引いたり、心身の疲労となって表れたりします。
更に、疲労感が続けば、徐々にやる気を失い、ミスをして怪我などの労働災害にも繋がりかねません。
ですので、余裕をもって仕事を終わらせることが、長い目で見れば正しい選択だと思うのです。
最後に
僕は雨の中の作業が嫌いでした。理由は記事にある通りです。
入った当初は、会社の方針で雨の日でも休まず通常の仕事をしていたので、よくズル休みをしていました。(有休も取らせてもらえなかったので)
その後、事業体の方針が変わり、休みと入れ替えて仕事をするようになり、(有休も取れるようになり)雨の日を避けて働くようになりました。
本当に、雨の日を回避したかったです。
当時は、天気予報を毎日チェックするのが日課になっていました。数日前までは傘マークだったのに、曇りに変わると悔しがったりして、雨に一喜一憂してました。
今でも癖で天気予報を確認してしまいます。