自伐型林業って、一体どんな林業なんだろう?
どうも、元フォレストワーカーのkitajinです。
本記事では、今更聞けない自伐型林業について解説しております。
お恥ずかしい話、林業紹介ブログを運営しているボクも、自伐型林業について、聞いたことがあるだけでどういうモノかもよく知りませんでした。
ですので、本記事を執筆するに当たり、『new自伐型林業のすすめ』という本を参考にさせてもらいました。
本記事では自伐型林業とは何か、そして、自伐型林業の可能性についてざっくりと紹介しています。また、自伐型林業のメリットデメリットなども紹介しているので、興味のある方はご覧ください。
【プロモーション】
〇この記事で分かること
- 自伐型林業とは?
- 自伐型林業の始め方
- 自伐型林業のメリットデメリット
- 自伐型林業は本当に儲かるか?
この記事を書いた人
- 静岡県浜松市で10年間林業に従事
(素材生産業者で伐採を主にやっていました)
- 林業に関する基本的資格はすべて取得
(林業架線作業主任者の国家資格取得者)
- 林業の情報を発信したくて林業ブログを運営
(運営歴1年の新人です)
林業の魅力や重要性などを実体験を通して発信していくつもりなので、林業に転職を考えている方は参考にしてください。
※本記事には、プロモーションが含まれています。
自伐型林業とは?
自伐型林業(じばつがたりんぎょう)とは、採算性と環境保全を高い次元で両立する持続的森林経営です。参入障壁が非常に低く、幅広い就労を実現します。
自伐型林業とは 自伐型林業推進組織の (zibatsu.jp)
引用は、自伐型林業推進協会のホームページからの一文です。
『new自伐型林業のすすめ』の著者である、中嶋健造(なかじま けんぞう)/NPO法人自伐型林業推進協会 代表理事は、自伐型林業を推進するために現在も精力的に活動を続けています。
代表理事 中嶋 健造プロフィール | NPO法人 自伐型林業推進協会 (zibatsu.jp)
ちなみに、従来、自伐型林業とは、林家などが代々受け継いだ山から木を切りだして売ることを呼んでいたようですが、中嶋健造氏が提唱する『new自伐型林業』の定義は上記の通りです。
そして、以下が『new自伐型林業のすすめ』を読んで、kitajinが解釈した自伐型林業です。
自伐型林業とは、自分たちの山(個人や集落など)を、自分たちにあった規模(専業・兼業など)の事業計画で、無理のない間伐をしながら、100年~150年続く山林へと育だて、その中で採算が取れた林業経営をしていく取り組みである。
継続的に利益を出せる仕組みづくりと、自分たちの山を守る環境保全の両面をうまく融合させて、地域に根差した新しい形の林業です。
自伐型林業の始め方
自伐型林業の始め方は、その人の資金力やコネクションなどにより変わってきますが、おおよそ以下の通りです。
管理する山を探す
まずは、管理する山を探すところから始まります。
専業型であれば30~50ヘクタール/人、兼業型であれば10~20ヘクタール/人の中・小規模な面積を買うか、借りるなどして管理する山を探します。
機械の購入
自伐型林業を始めるには、だいたい300〜500万円程度の機械の初期投資が必要です。
用意する物は、主に以下の通りです。
- チェーンソー
- 3トンクラスのミニバックホー
- 林内作業車
- 軽トラックor2トントラック
中古品を探せば、初期の機械投資はもう少し抑えられるかもしれません。
作業道の敷設
環境保全型林業を目指す自伐型林業は、小規模な「壊れない作業道」が必須です。
これは予防砂防の役割を果たし、土砂災害防止の役割も担っています。
少人数で、効率よく作業するためには、作業道がないと採算が取れません。
また、丈夫な作業道を作ることができれば、トラックをそのまま作業道に入れて、積み込みができるなど作業の効率化に繋がります。
択伐
自伐型林業は、自分の山の木を最大限に活かすために択伐を推奨しています。
市場の動向や季節などと照らし合わせて、採算性が高い木の伐採、造材をして利益を最大化します。
また、長期的に成長できる木を積極的に残すことで、100年以上育つ山づくりの実現を目指します。
林業以外の収入源
自伐型林業では、林業以外の収入源にも着目しています。
山菜やキノコづくり、養蜂、ジビエなど、山で収入になりそうなものを積極的に活用して、利益がでるように取り組んでいます。
自伐型林業では、兼業で林業をやる人もおり、夏はガイド、冬は林業と昔の林業従事者をほうふつとさせます。
自伐型林業は、自家伐採と小規模機械で、低コストの実現を可能にします。
さらに、余計な委託経費や機械償却、燃料代等がかからないため、施業の利益が確保され、採算が合います。
また、自伐型林業は、地域経済を活性化させるとともに、環境保全にも貢献する持続可能な産業として注目されています。
自伐型林業のメリット・デメリット
〇メリット
- 少人数で始められる
- 低資金で始められる
- 自分たちのペースで進められる
- 山に優しい林業
- 補助金も使える
- 地域一体となって進められる
- 最初からある程度、採算が取れるようにできる
〇デメリット
- 採算がとれる山探しが絶対条件
- 軌道に乗るまでが大変かも?
- 災害が起きた場合、どうなるのか?
- 参入障壁が低い分、素人が手を出しやすいので危険かも?
- 協力を得られないと難しいかも?
- 体力もだが、忍耐力や対応力などの基礎能力が必要かも?
- 強い気持ちが必要だ
自伐型林業メリット
少人数で始められる
自伐型林業は、1人からでも始められる林業です。
規模によって、やることを変えられて柔軟性もあります。
自分のペースにあった作業で、無理なく、安定した収入を得ることを目指しています。
低資金で始められる
前述の通り、初期投資は300万円から500万程度で始められます。
また、運転資金も燃料代のみであり、しかも低コストな燃料代で済むので、経費もほとんどかかりません。
人件費も、自分たちだけなのでかかりません。わずかに、機械の修理代が発生する可能性はあります。
自分たちのペースでできる
現行の林業は、森林組合の請負だったり、入札といった建設業のようなスタイルで仕事をするのに対し、自伐型林業は、自分たちが主体となって作業を進めることができます。
多くの収益を得たければ、頑張ればいいし、自分のペースでそこそこで良ければ、ゆっくりと確実に作業すればいいのです。安全面でも、急かされることなく、取り組むことができます。
山に優しい林業
自伐型林業は、山に優しい林業を目指し、作業を進めていきます。
ですので、無理な伐採や搬出、作業道の設置などはせずに、安全に山を傷めない方法を取って、伐採や搬出をする方法を取っています。
また、一つの山で作業をするため、山を荒らす害獣の被害を最小限に食い止めることができます。
自分たちの山なので、守っていくという思いが自然と生まれます。
補助金も使える
自伐型林業だからと言って、補助金が出ないわけではありません。
自伐型林業も補助金を申請すれば、補助金も利用できます。
現在、国をあげて、林業をバックアップする体制が整っているので 、利用できる制度も多くあります。
地域一体となって進められる
自伐型林業は少人数もできますが、 1つの集落が持つ山の方が向いています。
山間部の地域には、自分たちの集落で管理する山を持っている自治体は多くあるので、積極的に林業に参加して、自分たちの山を守りつつ、利益の出る林業を経営することができます。
従来の形に戻り、自分たちの山は自分たちので管理するという形にするのが自伐型林業です。
最初からある程度、採算が取れるようになっている
自伐型林業は、どうすれば採算が取れるかをあらかじめ計画してから事業展開します。
ですので、マイナスになるようなことはありません。
材の値が下がれば影響を受けますが、木が売れる限り、利益が出るような仕組みになっています。
現在の木材の価格なら、経費を抑えれば、十分、採算が取れるのです。
雇用を生み出している
山村のような比較的産業が乏しいところでも、自伐型林業をやることにより、雇用を生み出すことができます。
多くの人が利益を得る仕組みが作れるからです。
自伐型林業デメリット
採算が取れる山を探すのが大変かも?
素人考えですが、林業で生計を立てれる山が手に入るかを考えてしまいます。
例えば、採算が取れない伐境地点の山を買っても収益を得られませんし、林道もしっかり整備されていなくてはなりません。
急傾斜地では作業道が入れられないなどを考えると、一体どれぐらいの山があるのかということをちょっと疑問に思いました。
また、運よく見つけられたとしても、値段や交渉などを考えると素人が参入するにはハードルが高いのではないかと思いました。
軌道に乗るまでが大変かも?
自伐型林業は、軌道に乗るまでは大変そうです。
どの事業でも、軌道に乗るまでは大変なのは同じことですが、しかし、自伐型林業は参入障壁が低い分、林業に携わっていない人でもやれるので、いろいろと準備段階が必要になってきます。
人によっては、木を伐ることから教えてもらわなくてはならず、そこから、経営まで軌道にのせるのは数年はかかりそうです。
その間の収入確保や補助金の申請などの事業計画をしっかり立てなくては、成功するのが難しそうです。
自然災害のリスクは常にある
日本は台風、地震などの自然災害のリスクが常にあります。
山林は、何年かに一度、大きな台風の影響で風倒木が出るのですが、運悪く、自分の山の殆どの木が風倒木になった場合や林道、作業道が崩れた場合、その後どうするのでしょうか?
もちろん復旧はするでしょうが、その間の収入減や、その後の生活などを考えると、自伐型林業はダメージが大きいように感じました。
滅多にない事ですが、絶対ないとは言い切れません。
参入障壁が低い分、素人が手を出しやすいので危険かも?
前述の通り、自伐型林業は参入障壁が低く、林業の経験の浅い、もしくはない人でも起業ができるとのことです。
ですので、素人がいきなり木を伐ったりして大丈夫かな?という思いはあります。
しかし、「伐木等の特別教育」を受ければ、誰でもチェーンソーで木を伐っていいのも事実です。
また、自伐型林業推進協会が講師を派遣して、サポートをして仕事を覚えているようです。
協力を得られないと難しいかも?
自伐型林業は、山を買って、木を切り出して売ればいいというものではないです。
特に最初の頃は、多くの人の協力が必要となります。
まず、自伐型林業について学ばなくてはなりませんし、所有林がある集落の人たちとの交流も必要となります。
また、近くに林業経験者がいた方が心強いですし、測量や補助金などの申請には、森林組合の協力も不可欠です。ですので、誰の協力もなしに成功させるのは難しいでしょう。
体力もだが、忍耐力や対応力などの基礎体力が必要かも?
林業全般に言えることですか、体力だけではなく、忍耐力や対応力がないと続きません。
特に自伐型林業は、自分たちで作業計画から、運搬までをやり、尚且つ、林業以外の収益などの模索もやっていかなくてはならないので、バイタリティーが必要です。
林業は自然が相手の職業なので、特に精神力が強くないと続けるのは難しいかもしれません。
強い気持ちが必要
総合的に考えて、自伐型林業をやっていくのは、とても強い力が意思が必要だと感じました。
お金も必要ですが、それよりも意思と行動力があれば、始められると思います。
多少のことがあっても耐えうる力があり、周囲を巻き込んでいける勢いがなければ、とてもではないが始められそうにありません。
ズバリ自伐型林業は儲かるか?
木材需要の高まり
世界的な環境意識の高まりや、人口増加による建築需要の増加によって、木材需要は年々増えています。
自伐型林業は、自分の山で木材を生産するため、需要に合わせた生産が可能であるため収益性があります。
また、自ら販路を開拓することで、C材やチップ材などの有効利用もでき、木を無駄にしないのが特徴です。
コスト削減
自伐型林業では、伐採や搬出などの作業を自分たちで行うため、外部業者に依頼する場合と比較してコスト削減が可能です。
また、自伐型林業は、高性能林業機械などの大型機械を導入しないので、機械のローン代金や修理費、毎年の償却資産税も掛からないので、コストカットにつながります。
自伐型林業は自己経営によるコスト削減が見込めます。
地域貢献
自伐型林業は、地域の森林資源を活用し、地域の雇用創出や森林環境の保全につながります。
そのため、地域住民からの支持を得やすく、地域との良好な関係が築けるのです。
よって、地域貢献としての評価が高まり、集客力の向上につながり、事業の拡大を期待することができます。
付加価値の高い商品化
自伐型林業では、木材以外にも、山菜やきのこ、はちみつ、ジビエなどの自然資源を収穫し、販売する試みを同時進行で行います。
付加価値の高い商品化が可能で、自社ブランド商品の開発や直接販売なども行えるため、高収益化が期待できます。
択伐による最適な木材供給
自伐型林業は、択伐をすることにより、木材の収益を最大化させます。
市場の動向を見て、どの木の何メートルが売れているのかを確かめ、その木を狙って、伐採、造材して売りに出すので、一本の木からとれる利益を最大化できるのです。
副業としても注目されている
自伐型林業は主業としてだけでなく、副業としても注目されています。昔ながらの農業や漁業、工業などと合わせて林業に取り組むことができます。
また、 自分たちで新たな仕事を産み出して、経営しながら林業を並行してやる人もいます。
例えば、キャンプ場経営や観光ガイドなど、林業と掛け合わせることで、無限の可能性を生むことができます。
最後に
『new自伐型林業のすすめ』中嶋健造(なかじま けんぞう)/NPO法人自伐型林業推進協会著を読んで、本記事を作成させてもらったわけですが、自伐型林業はとても魅力的を感じました。
末端でも、素材生産に関わってきた者としては、現行の林業の矛盾について感じてきたので、新しい可能性を見せられた気持ちでした。
なぜ、生業を自分の力ではなく、補助金に頼るのかなどの思いがあり、商売人なら、自力で利益を生んでいかなければ意味がないとさえ思っていました。
しかし、それは気楽な従業員の立場であり、経営者から見ればそう簡単な話ではないのかもしれません。
それと、勝手な先入観として、林業は参入障壁が高い業界だと思っていました。ところがそんなことはなく、素人同然でもいきなり起業できることが分かり衝撃を受けました。
自伐型林業がもっと広がり、林業の労働人口が昔のように何十万人にも増えれば、林業の未来も明るくなるのではと期待が持てました。
最後になりましたが、『new自伐型林業のすすめ』 著者である中嶋氏に、本件を問い合わせたところ、快く記事にすることを承諾してくださいました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
また、氏の言葉によりますと、著書の情報はずいぶん古く、「現在の自伐型林業は、理論的にも実践的にも発展しています」とのことです。
もし、自伐型林業に興味のある方は、自伐型林業推進協会のホームページに進み、詳しい情報をご覧ください。
〇NPO法人持続可能な環境共生林業を実現する自伐型林業推進協会 ホームページ https://zibatsu.jp/
〇ZIBATSUチャンネル(動画配信)https://www.youtube.com/channel/UCgVRISJeNusnxbYad3vfajg