どうも、元フォレストワーカーのkitajinです。
本記事では、東日本大震災を機に浜松市に移住し、林業に従事しているTさんの実体験を元に、浜松への移住や浜松林業に関心のある方へ向けた情報をお届けします。
Tさんの移住理由や林業の現場での苦労話、そして浜松市の魅力まで、幅広く語ってもらいましたので、ぜひご覧ください。移住や林業転職を考えている方にとって、きっと参考になるはずです。
この記事を書いた人
- 静岡県浜松市で10年間林業に従事
(素材生産業者で伐採を主にやっていました)
- 林業に関する基本的資格はすべて取得
(林業架線作業主任者の国家資格取得者)
- 林業の情報を発信したくて林業ブログを運営
(運営歴1年の新人です)
林業の魅力や重要性などを実体験を通して発信していくつもりなので、林業に転職を考えている方は参考にしてください。
※本記事には、プロモーションが含まれています。
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浜松移住のリアル
◎Tさんの簡単なプロフィール
- 東京都出身
- 福島に移住
- 2011年 東日本大震災に被災する
- 同年 浜松市移住 林業事業体に就職
- 作業道のスペシャリスト
- 二児の父
- 趣味 サーフィン
浜松市への移住とその理由
Tさんは東京都出身で、その後、福島に移住して林業に従事していました。しかし、東日本大震災をきっかけに他県に移住を決意しました。
移住先を選ぶ際に、浜松市を候補地に挙げた理由は、奥さんの実家が三重県にあり、ご自身の実家との中間地点という立地が大きな要因だったそうです。しかし、移住はそれだけでは決まらないもの。Tさんは当時のことをこう振り返ります。
やはり震災後の生活や環境の変化に対応できるか、子供たちの未来を考えると、自然が豊かで安心して暮らせる場所を探していました。
浜松市は山も海も近く、子育てにも適していると感じました。
また、想像以上に生活のインフラが整っており、天竜区という全国的にも有名な林業が盛んな地域もある点が決め手だったといいます。
浜松市の第一印象
浜松市の第一印象について、Tさんは「思った以上に都会だった」と話します。特に、中心地の賑わいは目を見張るもので、快適に生活ができそうだと感じたようです。
移住前は、浜松市って、もっと田舎だと想像していたんですが、発展していて驚きました。それでいて、ゴミゴミしているわけでなく、町に活気がありました。
ただし、車は必須だと思いました。
実際に暮らしてみた感想は
浜松市は山と都市、海の距離的なバランスがよく、自然を身近に感じながらも、都市部での生活を楽しめる点が大きな魅力の一つだと言います。また、Tさんはこう付け加えます。
浜松は、山までのアクセスが容易で、林業に従事する人の中にも街中に住んでいる人が多くいます。福島では、山仕事をする人は、そのほとんどが山の近くに暮らしていたので、この点も新鮮でした。
浜松市の魅力
浜松市の魅力は、何といっても暖かい気候と晴れの日が多いことだといいます。また、Tさんは、趣味でサーフィンをやるので、海が近くにあり、サーフィンスポットが数多くあるということはありがたいと言います。
山と都市部と海までの距離感のバランスがよく、交通の便がいいということ。近隣の都市圏へのアクセスもいいので、ちょっとした旅行にも最適な場所だと感じました。
また子供は育てる環境も整っており、ショッピングモールや公園、図書館なども充実しており、育児がしやすいという話です。
浜松市の気になるところ
浜松市の気になるところは、気候で言えば、特有の季節風だと言います。
通称、遠州の空っ風といわれる冬場に吹く風は、木を伐採するとき、作業を困難にさせます。それと、ボクはサーフィンをやるのですが、この風は、サーフィンにとっても強敵です。
遠州の空っ風は、実際の気温より寒く感じさせます。Tさんは雪の積もる福島から越してきた冬こそ、浜松市の冬に快適さを感じていましたが、慣れてくると、浜松市の寒さを堪えるようになったと言います。
また、雪はめったに降らないのですが、そのせいでたまに大雪が降ると、それだけで交通機関はマヒして、パニックになるのには驚きました。
浜松人の印象
外から見た、浜松人の気質についてTさんはこう感じたと言います。
みなさん、とてもやさしく、暖かく自分を受け入れてくれました。浜松の人はとても勤勉で、努力家が多いと思います。その一方で、少し謙虚すぎるところがあり、もったいないように感じました。
浜松でよく言われるのは、やらまいか精神という言葉です。
成功するか失敗するか分からないが、とりあえずやってみようかというチャレンジ精神が昔から言われてきました。しかし、そのポテンシャルの割に、謙虚すぎて主張しないのが、もったいないとTさんは言っていました。
浜松の林業
浜松の素材生産業者に就職
Tさんは福島でも林業に従事していましたが、浜松市での林業はそれとは異なる経験をもたらしたといいます。
福島では、プロセッサーを使った皆伐作業が多く、流れ作業的でした。国有林での作業が中心で、規模が大きかったんです。しかし、浜松では間伐が主流で、一本一本丁寧に育てるような林業だと感じました。
また、浜松市は雪がほとんど降らないため、福島のように冬季の作業制限がないことも大きな違いでした。年中同じペースで仕事ができる環境は、Tさんにとって新たなチャレンジでもありました。
苦労したこと
浜松市での林業の現場では、最初は戸惑いもありました。特に、福島と異なる林業スタイルに適応するのに苦労したそうです。
移住した当初、浜松ではプロセッサーを使った事業体が少なく、重機も福島当時と比べて小さなサイズを使っていることに驚きました。
間伐中心で手作業が多く、架線を使った集材が主流の事業体もあり、最初は戸惑いました。しかし、就職した事業体では、福島でやってきた技術を買われて、いきなり作業道づくりを任されることになり、スムーズに会社に溶け込めました。
Tさんが苦労を乗り越えられた背景には、地元の林業従事者たちとの強い連携やコミュニケーションがあったそうです。
また、時期的にも、林業の転換期でもあり、全国的に作業道を入れて大型機械での集材、搬出が主流になってきたことも浜松市での成功の鍵となったようです。
浜松林業の魅力
浜松の林業の魅力について、Tさんはこう語ります。
浜松の林業は、木を大切にし、山を育てるという思想が根付いているんです。これは、天竜区をはじめとした長い林業の歴史が関係していると思います。
代々引き継がれてきた技術や知識が、今でもしっかりと活かされています。そして、山主をはじめ、様々な林業関係者を通じて、山林に対する熱い思いがある方が多い印象を受けました。
金原明善翁の時代から、天竜川の治山として根付いた林業を支えるために、天竜区では植林が盛んに営まれてきました。
現在でも、多くの自伐林業家がおり、自分の山を大切に守り続けています。そういった山主の山の木を伐らせてもらう時は、特に緊張するとTさんは言っていました。
浜松林業の課題
浜松林業の課題としては、圧倒的に人手不足だと言います。
今は個人事業主として、林業に携わっていますが、どこも人手不足が問題ですね。多くの山で、伐採可能な木が育っているのに、それを担う作業員が足りていません。
もちろん、ボクのところでも、人手が足りないのでいつも余裕がありません。
浜松市の森林面積は、101,222hといいます。(参照グラフで見る浜松市の森林面積は広い?狭い?(推移グラフと比較) | GraphToChart)
特に天竜区は、杉の名産地として知られ、急峻な地形が多く、搬出に手こずるケースが多いと言います。急峻な地形が有名な天竜杉を生み出していますが、同時に作業の大変さにも繋がっているのです。
様々な年代の用材を、地形にあった方法で、搬出していく。その方法がようやく確立できて来たのに、今度は人手が足りない。それが今の浜松林業の課題だといいます。
また、昨今の異常気象などで林道が壊されて、修復作業が遅れている場所があったり、林道の老朽化も深刻な問題になりつつあります。
人口が減っていく中で、今後、林道をどのように管理していくのかも林業にとっては課題になるのではないでしょうか。
現在の立ち位置
Tさんは現在、個人事業主として林業を続けています。大手素材生産業者の下請けとして活動し、他の個人事業主とも協力しながら、仕事に取り組んでいるそうです。
他の仲間たち(同じく個人事業主)とコミュニケーションを取りながら、生産をしていくというスタイルですが、作業する現場はつかえているが、人手不足で期待に応えられないのが難点だといいます。
目の前にある、素晴らしい山林を利益に変えていくには、これからも試行錯誤が必要に感じます。
臨機応変に山を管理するシステムがまだ整っていないのだと思います。この課題に個人事業主である自分がどう立ち向かっていくのかも今後、考えていかなくてはなりません。
今後の展望
最後に、今後の展望を話してもらいました。
雇われて働く選択肢もありますが、その場合、様々な制約を受けることがあります。
たとえば、家族の事情で働けない期間があったり、家業を継ぐが林業も続けたいなど。また、単純に一つの職場に縛られたくないという作業員もいます。
最近では、自分のような個人事業主で林業の仕事をしつつ、他の分野でも活動できるような働き方をする人が増えいるような気がします。
そういう人たちと連携を取って、作業現場を増やし、林業の仕事をしつつ、自分たちがやりたいことを実行していける新しい働き方があってもいいのではないかと思っています。そのための環境づくりを仲間たちと考えています。
Tさんは林業における「一人親方のコミュニティ」を作ることを考えているといいます。これは、個々の事業主が協力し合い、互いの仕事を助けるようなネットワークです。
まだ、試行錯誤の段階ではありますが、と続け、こうした取り組みを通じて、林業の未来をさらに広げていくことを目指しています。とTさんは。
まとめ
浜松市での林業は、山と都市が共存する環境で成り立っています。
美しい自然に囲まれながら、利便性の高い都市機能を享受できるこの地域では、林業を通じて自然と人との調和を体感できるのです。さらに、浜松は温暖な気候と豊かな地域文化に恵まれ、移住者にも優しい環境が整っています。
また、地域に根付いた伝統的な林業スタイルは、Tさんのような新しい担い手によって引き継がれ、さらに発展していくことでしょう。豊かな自然と人々の温かさに触れながら、充実した日々を送ることができるのが、浜松での暮らしの魅力です。
これから移住や林業転職を考えている方にとって、Tさんの経験談が参考になれば幸いです。浜松移住や林業への挑戦に興味を持った方は、ぜひお気軽にご相談ください。