どうも元フォレストワーカーのkitajinと申します。
本記事では、林業の盗伐について紹介しています。
盗伐を簡単に言えば、「他人の山から勝手に木を伐って持ち出すこと」です。
そんなことが可能なのか?と思われるかもしれませんが、実は現在、この盗伐の被害が多発していると言われています。
本記事では、盗伐がなぜ起こるのか、その背景と原因、またどのようにして盗伐が行われているのかについて紹介しています。
盗伐のことを広く知ってもらい、犯罪を未然に防ぐことに少しでも役に立てれば幸いです。
この記事を書いた人
- 静岡県浜松市で10年間林業に従事
(素材生産業者で伐採を主にやっていました)
- 林業に関する基本的資格はすべて取得
(林業架線作業主任者の国家資格取得者)
- 林業の情報を発信したくて林業ブログを運営
(運営歴1年の新人です)
林業の魅力や重要性などを実体験を通して発信していくつもりなので、林業に転職を考えている方は参考にしてください。
※本記事には、プロモーションが含まれています。
盗伐とは何か?その実情と影響
盗伐とは、許可なく他人の所有する森林から木材を違法に伐採する行為を指します。
盗伐は昔からありました。
しかし、昔の盗伐は、夜中に山に入り、一、二本盗むという規模の小さなものでした。しかし現在は、白昼堂々、何日もかけて、山に生えた木を根こそぎ皆伐して、盗むという大胆なものに変わりました。
昨年だけでも国内で数百件の盗伐が報告され、その被害額は数億円にのぼります。盗伐による被害は、林業に深刻な影響を与えています。
なぜ盗伐を行うのか?
盗伐がなぜ行われるのか、その要因を僕の考えも織り混ぜて紹介します。
見つかりにくい
多くの山林は、人里離れた場所にあり、ただでさえ人があまり立ち寄らないところです。
また、山林所有者が遠くに住んでいて、自分の山林の管理をせずにほったらかしにしているという問題もあります。自分が相続した山が、どこにあるのかさえ知らない所有者もいるくらいです。
そんな状況では、盗伐を見張る人間がおらず、犯罪が見つかりづらい状況にあります。
多くの利益が得られる
木を育てるのには、長い年月と費用が掛かります。
木を植えてから、用材として成長するまで、最低でも30~40年の歳月がかかります。
その間、下刈りをしたり、枝打ち、間伐などをして、木の成長を促さなくてはなりません。
それらの人件費はすべて、山林所有者の持ち出しです。
手間暇かけて、ようやく育った木を根こそぎ持っていくのが現代の盗伐です。
重機や人工などの経費以外は、利益になります。
皆伐なら、間伐などの作業より、費用も手間も抑えられるので、より多くの利益が得られるのです。
犯罪の線引きか難しく時効が短い
先ほど、盗伐が見つかりづらいという話をしましたが、万が一、犯行がバレたとしても、故意にやったのか、それとも間違いで伐ってしまったのか、第三者の判断は難しいところです。
森林境界線が不明確だったり相続時に名義を変えていなかったりすると、盗伐されたのが自分の山林であることを証明しづらく泣き寝入りになりやすいと言われています。
例え、被害者が訴え出たとしても、「施業範囲を間違って、伐採してしまった」と言って、強引に、わずかな補償で済ませてしまうとのです。
また、盗伐(森林窃盗罪)の時効は3年となっており、後から気づいても時効だったということにもなりかねません。
罰則が緩い
森林法
第七十七条: 無許可で森林を伐採した場合、5年以下の懲役または200万円以下の罰金が科せられます。
第八十一条: 他人の森林を違法に伐採した場合、7年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられます。
刑法
窃盗罪(刑法第235条): 他人の財物(この場合は木材)を盗んだ場合、10年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
器物損壊罪(刑法第261条): 他人の物を損壊した場合、3年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
例え、裁判になり、損害額を算出しても、木材価格が下落している昨今では、数十年育てた木であろうと損害額は1本当たり数千円程度に見積もられ、育ててきた山主の思いは斟酌されないのが現状です。
盗伐の問題点
歳月が無駄になる
前述の通り、木が用材として使えるまで成長するには、最低三十年という長い歳月がかかります。
良材と呼ばれる気になるまでは、さらに五、六十年かかります。
その間、手間ヒマをかけて育てた木を、いっぺんに取られてしまうのですから、被害にあった所有者の怒りややるせなさは、想像以上に深刻です。
先祖代々、守ってきた木が盗まれたことも、精神的苦痛を伴います。
また、犯罪を立証できたとしても、わずかな賠償額で済まされるのが現状です。
山が荒れる
盗伐する業者は、とにかく、短い期間で、すばやく木を山から搬出したいので、山がその後、どうなろうと関係ありません。
搬出するために作られた道も、その場限りで、災害が起こりやすい作りとなっています。
また、生態系のことも考えておらず、のちに残された山が、二次被害を受けることが報告されています。
業界の信用が低下する
盗伐という犯罪が横行するようでは、地域社会や現地住民にとって、基盤を脅かす問題となります。
森林資源が失われることや、代々守ってきた山林を任せることも危うくなります。
また、前述のように、盗伐業者は、山林が荒れるような仕事をしているので、その下で暮らす人たちに、大雨などの災害などがいつ襲ってくるかもしれません。
経済的影響
盗伐は合法的な林業産業に悪影響を及ぼし、木材市場の混乱を引き起こします。
盗伐は、犯罪で手に入れた木材なので、価格の下げることが可能です。
すると、合法的に運営されている企業との価格競争に有利になり、市場が混乱します。結果、真面目にやっている企業が経済的損失をもたらし、持続可能な林業の推進が困難になります。
どうすれば盗伐がなくなるか?
規制と罰則の強化
盗伐防止のためには、厳格な法律とその厳格な施行が必要です。違法伐採に対する罰則を強化し、取り締まりを徹底することで、盗伐の抑制が可能になります。
しかし、違法伐採による被害は、警察はあまり腰をいれて取り締まりをしてくれないようです。
取り締まりが厳しくなれば、その分、犯罪件数も減るはずです。
参照ある日、山がなくなっていた……「盗伐」被害、警察が動きにくい理由 (withnews.jp)
テクノロジーの活用
現在は、GPS追跡、リモートセンシング、人工知能などの技術があるので、これを利用しない手はありません。
これらを利用することで、森林の監視と盗伐の検出が効率化されます。
人の目を利用するより、テクノロジーを活用したほうがはるかに効果的な対策を講じることができます。
持続可能な林業の促進
また、市場に出回る商品に対しても、対策が必要です。
森林認証制度や持続可能な経営の重要性を啓発し、合法的かつ持続可能な林業を推進することが必要です。
これにより、消費者は違法伐採による製品の購入を避け、結果、違法伐採が立ち行かなくなります。
意識の向上
いかにテクノロジーを活用しても、人の監視がないと意味を成しません。
盗伐を防ぐためには、林業に関わる人たちすべての意識が向上しなければなりません。
業界人だけでなく、地域社会の参加も重要で、地元住民が積極的に森林保護活動に参加することで、盗伐を抑止できます。
さらに、森林パトロールなどの強化や、林地などの厳格な管理体制執行も必要です。
個人としてできること
林業に誇りを持つ
自ら犯罪に手を貸すのではなく、毅然として、犯罪に加担しないようにすることが何より大切です。
犯罪グループも一人では盗伐できません。
なので、いくら日当が好かろうが、犯罪に手を貸すようなことをしないことが大切です。
盗伐の啓もう活動
盗伐が横行している事は、あまり知られていないようです。
僕自身、全国で盗伐が横行していると知ったのは昨年です。遠い異国の話ではなく、日本でも身近にある犯罪であることをもっと発信していかなくてはなりません。
ソーシャルメディアや地域のイベントを通じて、盗伐問題について広く情報を発信し、関心を喚起することが重要です。多くの人々が問題に関心を持ち、行動することで、盗伐の抑制に向けた社会的な動きが強まります。
盗伐防止への貢献
消費者として出来ることとしては、違法伐採による製品を避けることが重要です。
認証ラベルの付いた製品を選ぶことや、認証事業体から、直接商品を買うことも盗伐防止に貢献できます。
まとめ
盗伐は、林業の業界だけでなく、地元住民に対しても、重大な問題となります。
昨今の、気候変動により、災害が起こりやすくなっている現状において、山を荒らす盗伐は、単なる犯罪に留まらないかもしれません。
また、被害者である、山林所有者の心痛は、単なる山の木を盗まれただけでなく、先祖代々、守ってきた山を冒されたようで、被害にあった方の中には、精神的ショックを引きずる方もいるようです。
窃盗は、卑劣な犯罪であることは、誰も知っている事なのに、山に生えている木を盗むことはあまり重要視されないのは、木の価値が損なわれている現在だからこそなのかもしれません。
警察などの操作があまりはかどらないのも、木材の価値が下がっている要因があるのかもしれません。
また、単なる人の目の届かない場所にあるから、盗伐が横行するのではなく、林業業界全体のモラルが低下が、盗伐を見過ごす土壌を作っているのではないかと、末端にいる者としても思わずにいられません。