
どうも、元フォレストワーカーのkitajinです。
本記事では、林業と健康について紹介しています。
私は、長年林業に従事してきて、林業がいかに健康的な職業であるかを実感してきました。
毎日、自然の中を歩き、澄んだ空気を吸いながら働くことで、体力がつき、ストレスも軽減され、心身ともに健康になっていくのを感じたのです。
これは単に、給料を得るための職業にとどまらず、長期的に見て、何より代えがたい魅力ではないでしょうか。
そこで今回は、林業の転職を考えているあなたに、林業が健康にもたらす4つの効果を、科学的エビデンスを交えて解説します。
現在、林業に従事している方にも参考になる内容ですので、ぜひ最後まで読んでください。
この記事を書いた人

- 静岡県浜松市で10年間林業に従事
(素材生産業者で伐採を主にやっていました)
- 林業に関する基本的資格はすべて取得
(林業架線作業主任者の国家資格取得者)
- 林業の情報を発信したくて林業ブログを運営
(運営歴1年の新人です)
林業の魅力や重要性などを実体験を通して発信していくつもりなので、林業に転職を考えている方は参考にしてください。
※本記事には、プロモーションが含まれています。


林業がもたらす4つの健康効果

運動の効果
林業の作業と言えば、何といっても体力が必要な職業です。
木の伐採や造材、枝払い、搬出など、体を動かすことは当たり前で、適度な運動量を自然に確保できます。
とある研究によれば、1日約4,000歩の歩行で、循環器疾患を含むあらゆる死亡リスクを減らす効果があるとされています。
さらに、1日8,000歩から12,000歩の歩行は、死亡リスクをさらに低減させることが示唆されています。
参照 diamond.jp
林業の作業では、これらの歩数を容易に達成できるため、健康維持に役立ちます。
また、運動は様々な効果をもたらします。
足腰を鍛えることは老化を防ぐのに有効で、足の衰えは反対に老化を進行させるのも科学的に証明されています。
運動によるストレスホルモンの低減
運動を行うと、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が抑制され、ストレスが軽減されます。また、運動によってエンドルフィンが分泌されることで、気分が向上し、リラックス効果が得られます。
📖 参考研究
- Hillman et al., 2008(運動がストレスホルモンを抑制する効果)
- Salmon, 2001(有酸素運動によるエンドルフィン分泌とストレス緩和)
森林効果
森林の中で作業することは、ストレスの軽減に効果的です。
森林浴には、血圧を下げ、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制する効果があることが報告されています。
また、森林環境での活動は、心理的なリラックス効果を促進し、精神的な健康にも寄与します。
森林内の空気は清浄であり、フィトンチッドと呼ばれる植物が発散する成分が含まれています。これらの成分は、リラクゼーション効果や免疫力の向上に寄与するとされています。
参照 env.go.jp
緑豊かな環境での作業は、視覚的な癒し効果もあり、心身の健康増進に役立ちます。
自然の中での運動によるリラックス効果
森林環境下での運動(森林浴をしながらの作業)は、都市部での運動よりも自律神経のバランスを整え、副交感神経を優位にすることが分かっています。これにより、ストレスや不安が軽減され、リラックスした状態を維持しやすくなります。
📖 参考研究
- Li et al., 2011(森林浴とストレスホルモンの減少)
- Park et al., 2010(森林での運動が精神的健康に与える影響)
他にも、森林には、視力を回復させる効果も実証されています。特に朝日を浴びることで視力が良くなることがあるそうです。
規則正しい朝型の効果
林業は、朝早くから活動を開始し、午後四時~五時頃に作業を終える事業体が多いため、規則正しい生活リズムを確立しやすい職業です。
規則正しい生活は、睡眠の質を向上させ、全体的な健康状態の改善に寄与します。
また、朝陽を浴びることは、様々な健康効果があると証明されています。
体内時計(概日リズム)の調整
朝陽を浴びることで、体内時計(サーカディアンリズム)がリセットされるため、規則正しい生活リズムを作るのに役立ちます。
- メラトニンの分泌抑制: 朝の光は、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を抑え、目覚めを促します。
- コルチゾールの分泌促進: 朝の光を浴びると、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が適切に活性化され、活動的になります。
📖 参考研究:
・Riemersma-van der Lek et al., 2008(メラトニン分泌と概日リズムの調整に関する研究)
セロトニンの分泌促進(気分の安定)
朝陽を浴びることでセロトニン(「幸せホルモン」とも呼ばれる)の分泌が促され、うつ症状の予防や改善に役立ちます。
- セロトニンは精神の安定や幸福感の向上に関与しており、不足するとうつ病や不安症のリスクが高まります。
- 特に**季節性うつ病(冬季うつ)**は、日照時間が短くなるとセロトニン分泌が低下することが原因とされています。
📖 参考研究:
・Lam et al., 2006(光療法と季節性うつ病の関係)
・Benedetti et al., 2001(朝の光を浴びることとセロトニン分泌の関係)
ビタミンDの合成(骨と免疫機能の強化)
朝陽を浴びることで、皮膚が紫外線B(UVB)を受け、ビタミンDが合成されます。
- 骨の健康維持: ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨粗しょう症の予防に効果的。
- 免疫力の向上: ビタミンDは免疫細胞の活性化に関与し、風邪やインフルエンザ、自己免疫疾患のリスクを下げる可能性があります。
📖 参考研究:
・Holick, 2007(紫外線とビタミンDの関係)
・Martineau et al., 2017(ビタミンDと免疫機能)
人間関係のストレス軽減効果
林業の作業は、自分で計画を立てて進める自由度が高く、自律性を持って働くことができます。また、自然の中での作業が中心となるため、都市部のオフィスワークに比べて人間関係のストレスが少ない傾向があります。
これにより、精神的な負担を軽減し、心の健康を維持しやすくなります。
対人ストレスの軽減
一般的な職場では、上司や同僚との関係、顧客対応などによるストレスが発生します。一方、林業では人間関係の影響が比較的少なく、チームでの作業もシンプルな指示系統のもとで行われることが多いため、心理的な負担が軽減されます。
研究では、職場の対人ストレスが高いと、心血管疾患やうつ病のリスクが増加することが示されています。
📖 参考研究
- Kivimäki et al., 2006(職場ストレスと心血管疾患リスクの関係)
- Siegrist, 1996(仕事のストレスと精神的健康の関連)
チームワークによる社会的サポート
- 林業の作業は少人数のチームで協力して行うことが多く、シンプルながらも相互の信頼関係が築かれやすい環境です。
- 社会的サポートは、ストレス耐性を高める要因の1つであり、孤独感を減少させ、精神的な安定をもたらします。
📖 参考研究
- Uchino et al., 1996(社会的サポートとストレス耐性の関係)


林業のリアルな働き方


それでは実際にどんな作業があるのでしょうか?
伐採作業(チェーンソーを使う作業、伐倒技術)
伐採作業は、成熟した木を計画的に切り倒す作業で、林業の中でも特に技術と安全管理が求められます。作業にはチェーンソーや伐倒用のくさび、ロープなどの道具を使用し、木の倒れる方向を正確に見極めながら慎重に進めます。
特に重要なのは、「受け口」や「追い口」の正確なカットです。受け口とは木を倒したい方向に切り込みを入れる部分で、追い口は最後に切る部分です。これを適切に調整することで、安全に木を伐倒できます。間違えると木が想定外の方向に倒れたり、「ツル(倒れ際に支える木の繊維)」の強度が不適切になり、重大な事故につながることもあります。
また、伐採後は枝払いを行い、丸太の状態に整えます。大型の機械(ハーベスター)を使う現場もあれば、チェーンソーを駆使して一本ずつ手作業で仕上げる現場もあり、作業内容は地域や森林の状況によって異なります。
枝打ち・下刈り
林業は木を切るだけでなく、森の健康を維持するための管理作業も欠かせません。その一つが「枝打ち」です。枝打ちは、幹に日光が当たるように不要な枝を切り落とし、木材の品質を向上させる作業です。枝が多いと節(ふし)のある木材になり、製材した際の価値が下がるため、早いうちに整えることが重要です。
また、「下刈り」は若い木がしっかり成長できるよう、雑草や低木を刈り取る作業です。特に植林後の数年間は、雑草が成長を妨げるため、定期的な下刈りが必要になります。夏場は暑さや虫との戦いになりやすく、熱中症対策や防虫対策をしながらの作業となります。
搬出作業(木材を運ぶための作業、林道や架線の活用)
伐採した木を山から運び出す作業が「搬出」です。伐採した木材はそのままでは利用できないため、適切な長さに切りそろえ、効率よく運搬する技術が求められます。搬出方法は大きく分けて以下の2つです。
- 林道を利用する方法
重機(フォワーダーやスキッダー)やトラックを使い、山の中に作られた林道を通じて木材を搬出します。林道が整備されていないと作業が難しくなるため、林道の開設や補修も重要な業務です。 - 架線(ワイヤーロープ)を利用する方法
山が急斜面で機械が入りにくい場合は、架線(ワイヤーロープ)を張り、ウインチで木材を吊り上げて運搬する方法が使われます。これは高度な技術が必要ですが、環境負荷を抑えながら効率的に木材を搬出できるメリットがあります。
搬出作業は機械を使うことが多く、操作技術や安全管理の知識が必要です。また、急斜面での作業になることもあり、滑落事故などのリスクが高いため、安全対策を徹底することが求められます。
植林・育林(苗木を植える、間伐を行う)
木を切った後は、新たな森を育てるための「植林」と「育林」が重要になります。
植林(苗木を植える作業)
伐採後の土地には、苗木を植えて次世代の森林を育てる作業を行います。苗木はスギやヒノキなどの人工林向けの樹種が多く、一本一本手作業で植えていきます。植えた後は、適切に成長するように**下刈りや施肥(肥料を与えること)**を行いながら管理します。
育林(間伐を行う作業)
木が成長してくると、適度な間隔を保つために「間伐(かんばつ)」を実施します。間伐は、密集しすぎた木を間引きし、残った木が十分に太陽の光を受けて健全に育つようにするための作業です。間伐を適切に行わないと、木が細く成長し、風や雪に弱くなるため、森の健全な育成のためには不可欠な工程です。
育林作業はすぐに利益が出るものではありませんが、数十年先の森の質を決める重要な仕事です。適切な管理を続けることで、良質な木材を生み出し、持続可能な林業へとつながります。
林業のデメリットと健康リスク


最後に、林業は健康的なことばかりではありません。特に気をつけたいのが怪我であり、労働災害は、千人率で言えば、全職業の内、ナンバーワンの危険な職業です。ここでは、どんな危険があるのかを簡単に紹介しています。
伐採作業の危険(倒木やチェーンソー事故)
林業における最も大きなリスクのひとつが、伐採作業中の事故です。
倒木の方向を誤ると、作業員や周囲の人に直撃する危険があり、命に関わる重大な事故につながることもあります。また、チェーンソーの取り扱いを誤ると、キックバック(刃が急に跳ね返る現象)により手や体に深刻な傷を負う可能性があります。
安全な作業のためには、作業前の入念な計画、適切な装備(防護服・フェイスシールド・防護手袋)、正しい姿勢とチェーンソーの扱い方を徹底することが重要です。
滑落・転倒のリスク(山の斜面や濡れた木での作業)
林業の現場は傾斜のある山間部が多く、**足場が不安定な場所での作業が避けられません。**特に雨の日や朝露が残る時間帯は、濡れた木や苔の生えた石が滑りやすく、転倒や滑落のリスクが高まります。
転倒時にチェーンソーを持っていると大怪我につながるため、転倒を防ぐための「滑りにくい安全靴」や「ハーネス」を着用し、しっかりとした足場を確保しながら作業することが大切です。
重労働による腰痛や関節痛(重い荷物を持つ、長時間の中腰作業)
林業は木材を運搬したり、伐採後の枝を整理したりと、重労働が多く、腰や膝に負担がかかりやすい仕事です。
特に長時間の中腰姿勢や、無理な体勢での作業は、慢性的な腰痛や関節痛を引き起こす原因となります。これを防ぐためには、正しい姿勢を意識し、腰をサポートするベルト(コルセット)を使用するのが有効です。
また、作業後にはストレッチや筋力トレーニングを行い、腰や関節に負担をかけない体づくりを心がけることが大切です。
虫刺され・動物との遭遇(ハチ、マダニ、マムシなどの毒蛇)
林業の現場では、ハチやマダニ、マムシといった危険な生物との遭遇が避けられません。
特にスズメバチは秋口になると攻撃性が増し、刺されるとアナフィラキシーショックを引き起こすこともあります。マダニは重篤な感染症(SFTS)を媒介するリスクがあり、噛まれた場合は慎重に対処する必要があります。
また、草むらや倒木の近くではマムシなどの毒蛇が潜んでいることもあるため、足元には十分な注意が必要です。対策としては、長袖・長ズボンの着用、防虫スプレーの使用、ハチがいるときは不用意に手を振らないなどの基本的な予防策を徹底しましょう。
疲労の蓄積
毎日の肉体労働は、慢性的な疲労が蓄積し、集中力の低下やケガのリスク増加にもつながります。
そのため、適切な休憩を取りながら、無理をしない働き方を意識することが重要です。
また、疲れをとるために、ストレッチや生活習慣に気を使う必要があります。
林業の仕事は体に悪い?長く続けるための健康管理術

体力勝負の仕事だからこそ、正しい健康管理が欠かせません。林業を長く続けるためには、日々の栄養管理やストレッチ、十分な休養が必須です。以下のポイントを押さえて、ケガや体調不良を防ぎましょう。
疲労回復のための食事と栄養管理(たんぱく質やミネラル補給)
長時間の肉体労働では、筋肉が損傷しやすく、十分な栄養補給が不可欠です。
特に、たんぱく質(肉・魚・大豆製品)やミネラル(マグネシウム・鉄分)を意識的に摂取することで、筋肉の回復を促し、疲労の蓄積を防ぐことができます。
また、水分や塩分補給も大切で、夏場は特に熱中症予防として適量の塩を含んだ飲み物を摂るようにしましょう。
睡眠の質を上げる方法(作業後のストレッチ、リラックス法)
体を酷使する仕事だからこそ、睡眠の質を高めることが重要です。
作業後は、ストレッチや軽いマッサージで筋肉をほぐし、入浴で体を温めることで、疲労回復を促せます。
また、寝る前にスマホやテレビを控え、**副交感神経を優位にするリラックス習慣(深呼吸や軽い読書など)**を取り入れると、ぐっすり眠ることができます。
健康診断の重要性(定期的なチェックで体の異常を早期発見)
林業はハードな仕事であるため、健康診断を定期的に受けることが大切です。
特に、腰痛や関節痛、血圧の異常、疲労の蓄積などは自覚症状が出る前に対処することで、重症化を防ぐことができます。
また、年に一度の健康診断だけでなく、日々の体調チェック(朝の血圧測定や体重管理)を習慣にすると、より健康的に仕事を続けることができます。
体力勝負の仕事でどれだけ疲れるのか
林業の仕事は筋肉を酷使するため、一般的なオフィスワークとは比べものにならないほどの疲労がたまることもあります。
特に、慣れないうちは足腰や背中の筋肉痛が激しく、仕事を終えたら動くのも大変という人も少なくありません。
しかし、継続して体を動かしていくことで、徐々に体力がつき、仕事のペースもつかめるようになるため、最初の辛さを乗り越えることが大切です。
休憩の取り方と水分補給の重要性
疲労や熱中症を防ぐためには、適度な休憩とこまめな水分補給が欠かせません。
特に、夏場の林業は炎天下での作業が多く、脱水症状になりやすいため、定期的に水分を摂ることが大切です。
また、休憩中にストレッチをして体をほぐしたり、軽い食事を取ることでエネルギー補給をするのも効果的です。
無理に長時間働くのではなく、計画的に休憩を取りながら作業を進めることが、長く続けるためのコツです。


まとめ

林業は、ただの仕事ではなく、健康的なライフスタイルを手に入れる手段でもあります。
①運動量が多く、自然と体力がつくため、生活習慣病のリスクを減らせます。
②緑に囲まれることで、精神的に安定し、リラックス効果が得られるのも大きなメリット。
⓷規則正しい朝型の生活、太陽の下で働くことで、ビタミンDを効率よく生成し、骨の健康維持にも貢献します。
④人間関係のストレスが少なく、自分のペースで働けるため、精神的負担が軽減されます。
体も心も健康になる職業、林業にあなたも挑戦してみませんか?