どうも、元フォレストワーカーのkitajinです。
本記事では、ボクが体験した10年以上前の林業について紹介していきたいと思います。
ボクが林業を始めたのは2009年です。l
10年ひと昔と言いますが、この10数年で林業は大きく変化してきました。
高性能林業機械が主体の、作業道をいれる林業により、作業が飛躍的に効率化しました。
しかし、わずか10数年前までは、これから紹介するような非効率な作業が一般的に行われていたのです。
本記事を読むことで、過去の作業方法を振り返り、現在の林業の進化をより深く理解できるだけでなく、未来に向けた新たな可能性を考える手助けにもなるかもしれません。
また、林業を始めて間もない人にとっては、新しい知識や視点を得る良い機会になるでしょう。
林業の歴史や変化を知ることで、現在の仕事に対する理解が深まり、より良いアプローチを見つけるヒントになるかもしれません。
この記事を書いた人
- 静岡県浜松市で10年間林業に従事
(素材生産業者で伐採を主にやっていました)
- 林業に関する基本的資格はすべて取得
(林業架線作業主任者の国家資格取得者)
- 林業の情報を発信したくて林業ブログを運営
(運営歴1年の新人です)
林業の魅力や重要性などを実体験を通して発信していくつもりなので、林業に転職を考えている方は参考にしてください。
※本記事には、プロモーションが含まれています。
一昔前の林業
集材機で搬出する
昭和の林業では、集材機を山に据え付けて材木を搬出する方法が主流でした。
架線集材と言われ、搬器を行き来させることで、木材を運ぶのが一般的だったのです。
集材機は、見晴らしの良い場所に据えるのですが、それでも見える箇所はいわば林業の中心的な存在でした。
しかし、集材機を使った集木は、以下のデメリットがありました。
- 架設に時間がかかる
- 作業に二人は必要
- 熟練した作業員の指導が必要
- 架線集材主任者の資格を持つ者が、現場に最低一人はいないといけない
ユニックで材を積んで運ぶ
現在では、材木を運搬するトラックにはグラップルが主流ですが、一昔前はユニック付きのトラックで木材を積み込んで運搬するのが一般的でした。
やり方としては、材数本の端をスリングで持ち上げて、別のスリングを材の中心に引いて材を下ろす。中心で吊り上げて積み込む。これを繰り返して、トラック一車分の材を積み込むのです。
下ろす時は、同じ方法を使うか、フォークリフトなどで下ろすのでした。
この方法では、積み込みや荷下ろしに多くの時間を要しました。
ユニックで引っ張る
ひと昔前の林業では、ユニック付きのトラックは運搬だけでなく、他の用途でも使われていました。
一例を挙げると、
- 道際の伐採や造材の補助
- 集木
- 集材機の据え付け
- 架設で線を張り上げる
ユニックは、その性能を活かすことで様々な場面に役立ちましたが、現在では、グラップルや据え付けのウィンチなどで、それらの作業を担っています。
トビで集材する
知らない人の為に簡単に説明すると、トビというのは、材に突き刺して、材を動かすための道具です。
鳶のくちばしに似ていることから、この名がついたと言います。
動かすと一口に言っても、用途は様々です。
例を挙げると
- 斜面にある材を滑らせて、落としていく
- 回転させて、面を変える
- 持ち上げて、障害物をかわす
- 一カ所に集木する
昔は架線集材が一般的だったので、山造材して、細分された材を架線の下に集める作業がありました。
集まった材をスリングでなるべく多く吊り下げて、搬器で運ぶことが求められたのです。
今では効率的な機械に取って代わられていますが、当時は力仕事が当たり前でした。
ワイヤーをつなげて集材する
昔の林業では、10メートル以上あるワイヤーをつなげて木材を引き寄せる方法も一般的でした。
なぜ、繋げるというと、本来は十数メートルくらいの距離で集木できるのですが、それ以上遠くなる木を引き寄せないといけないからです。
最初から長いワイヤーは扱いづらいので、短くなるのです。
繋ぐ方法としては、シャックルというU字型の留め具や、キトークリップという留め具を使用しました。
繋げて伸ばしたワイヤーをウィンチで巻き取り、木を道や架線に近づけて搬出するのです。
これも労力と時間がかかる作業でした。
チルホールで伐倒する
木を伐倒する際には、チルホールと呼ばれる手動の引き具が使用されていました。
チルホールとは、鉄で出来た、重さ5㎏~10㎏はある牽引具です。
器具の後ろに鍵型の留め具、専用のワイヤーを本体に通し、先端にフックがついているので、それを引きたい対象に着けたワイヤーのアイなどにかけて、滑車を使ってV字にして、チルホールで引くのです。
しかし、チルホールでの牽引伐倒は、二人の作業員が必要であり、なおかつ、枝が絡んだり大径木だと、引く力が弱くて、倒せない場合があります。
また、牽引するワイヤーを伐採木に高くつけないといけないので、梯子をしようしていました。
これも非効率的で、大変な重労働を伴う作業でした。
ひっぱりだこを使う
特定の場面では、ひっぱりだこという簡易的な道具を使って木材を引き寄せることもありました。
ひっぱりだことは、商品名であり、
手動のコンパスを使っての測量
林地測量には昔から手動のコンパスが広く使われてきました。
この方法は、シンプルな道具で森林の境界や区画を効率的に測定でき、資源管理や調査に役立つデータを収集できます。
基本的な道具には方位測定用のコンパスや距離を測る測量テープ、記録用のノートなどが含まれます。測量は基準点を設け、方位と距離を測りながら進めます。
磁場の影響や視界の確保、安全対策が重要です。
現在は、GPSやドローンの普及も進んでいますが、コンパス測量は今なお手軽で有用な手法です。
今後の林業
ドローンの活用
林業におけるドローンの活用は多岐にわたります。
まず、森林管理や調査の分野では、樹木の健康状態や樹種の識別、伐採エリアの確認に役立ちます。マルチスペクトルカメラやLiDARを搭載したドローンは、精密な地形データの取得や災害時の被害状況把握にも活用されます。
また、植林作業の効率化にも貢献しており、種まきの自動化や植林エリアの確認が可能です。さらに、伐採現場では材木運搬ルートの最適化や作業の監視を行い、安全性と効率を向上させます。
加えて、違法伐採の監視や動植物の生態調査を通じた森林保全にも寄与します。教育や観光分野では、ドローン映像を用いて林業の魅力を発信したり、バーチャル森林ツアーを提供するなど、多面的な活用が期待されています。
これらにより、作業の効率化、安全性向上、コスト削減が実現しています。将来的には、ドローンを使った搬出などができるようになるかもしれません。
◎用途例
- 森林管理と調査: 樹木の健康診断や樹種識別、伐採エリアの確認
- 地形や災害調査: 精密な地形データの取得、土砂崩れや倒木被害の確認
- 植林作業の効率化: ドローンによる種まきの自動化と植林エリアの確認
- 伐採と材木運搬の支援: 材木運搬ルートの最適化、作業監視による安全管理
- 森林保全とモニタリング: 違法伐採の監視、生態系調査による保全活動
- 教育・観光分野: ドローン映像を活用した林業の魅力発信やバーチャル森林ツアー
AI林業
ICTやAIを活用した林業が注目されています。
木材の品質管理や最適な伐採タイミングの判断など、AIが支援することで作業効率がさらに向上します。
航空機やドローン、地上のタブレット端末からのレーザーセンシング情報をかけ合わせた独自のICT統合技術を開発、1本1本の樹木まで3次元で映像解析できるため、必要とする樹木を伐採することができ、伐採の現場から流通まで一貫したビジネスを可能にしました。さらにAI技術で、国内初となる苗木の自動抽出と高額で取り引きされる広葉樹の種類までの特定が可能になりました。
大区画で行われる林業
現代の林業は、小規模な作業から、大規模な区画での効率的な作業へと移行しています。これにより、資源管理の面でも飛躍的な改善が期待されています。
「大区画で行われる林業」とは、広大な土地を効率的に管理し、持続可能な森林経営を目指す手法です。この方法では、数十ヘクタール以上の広大な面積を一括管理し、高性能林業機械を導入して作業を効率化します。
また、植林や伐採を長期的な計画に基づいて行うことで、森林資源を持続的に活用し、環境保全にも寄与します。
主な利点として、規模の経済によるコスト削減、収益性の向上、大規模な環境保全が挙げられます。一方で、初期投資の高さや機械操作の専門知識の必要性、地域住民との調和などの課題も存在します。
日本では、北海道や東北地方での実例があり、国や自治体の補助金を活用しながら進められています。この林業は効率性と収益性を高めつつ、地域環境を守る重要な取り組みです。
まとめ
一昔前の林業と現在の林業を対比することで、いかに技術が進歩しているかが分かります。過去の経験を振り返りつつ、未来に目を向けることが重要です。今後も林業の進化に期待しつつ、環境との共生を意識した持続可能な方法を模索していきましょう。
現代の林業は、高性能機械やテクノロジーを活用することで、大幅に効率化されています。
しかし、過去の作業方法から学ぶことも重要です。非効率な方法であっても、現場で培われた知識や技術には価値があります。それを基盤として、新たな技術やアイデアを取り入れることで、林業はさらに進化していくでしょう。
ご覧いただき、ありがとうございました。